ALIC/WEEKLY
【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 12月3日発】フィリピン政府は、この 99年第3四半期の国内総生産額について公表した。これアルゼンチンの代表的な 畜産情報誌“Informe ganadero”(畜産情報)の編集長イグナシオ・イリアルテ氏が 分析、予測したアルゼンチン牛肉市場は、次の通りである。 (家畜の供給量について) 98年のと畜頭数は1千2百万頭、99年は去勢牛のと畜が増加し1千3百万頭 と予測され、かつ、と畜時生体重が前年と比較して大きくなった。 98年以降景気が悪い上に、99年は生産量が前年に比べ8%以上増加すること が予測されるので、国内価格は下落するように思える。しかし、1千3百万頭程度 の供給量であれば国内需要が吸収し、メキシコのテキーラ危機の影響を受けた時の ような価格の暴落は生じない。牛肉については、アルゼンチンの胃袋は大きい。 価格の下落に関し心配な点がある。近年飼養頭数が5千3百万頭から4千8百万 頭に激減したのに牛肉生産量はさほど減少していない、すなわち生産性が高まった。 逆に、このことが、価格の低下につながるのではないかと懸念している。 (生産性が高まった理由とその影響) 繁殖雌牛の出産率の向上がその理由。今ではパンパ地域の生産者は85%以下の 出産率では評価されないし、また85%以上の生産者も多い。 1つの結論は、生産性が高まると、今の輸出価格では国際価格に勝てないから、 増加した分の牛肉はすべて国内市場に回る。国内需要は強いので増加分は吸収でき るが、価格の下落は避けられない。 過去、現状の生産性では飼養頭数が4千8百万頭で、1千3百万頭以上はと畜で きないと分析したが、生産性が高まり1千4百万頭がと畜されたらどうなるか。輸 出競争力が十分ないため国内市場に追加の1百万頭の牛が殺到し、価格の暴落は避 けられない。幸い過去数年間は必要以上の供給(出荷)はなかったので生体価格0. 8ドル(84円:1ドル=105円)/kgを保て、テキーラ危機の0.7ドル(7 4円)/kgにまでは落ち込まなかった。 (今後の市場動向) 生産性の向上は、われわれの長年の夢だった。子牛生産者が生産性向上に目覚め つつある今、飼養頭数4千8百万頭に対し1千4百万頭をと畜に回すことは可能だ。 ただ、時期が悪い。わが国のマーケットは豪州とニュージーランドに取って代わら れようとし、米国とEUの関税割当枠も拡大しそうにない。加えてブラジルの輸出 競争力は強大で、わが国の輸出業者の経営状態はデリケートだ。 このような中で、追加の1百万頭以上の牛が市場に流れれば、国内市場の混乱は 避けられない。また肉の需要の8割はサラリーマン家庭だが、失業率は高く、彼ら の給与も減らされている。前年と同じ牛肉の家計出費は全く期待できない。 市場への供給量と価格は反比例で、全体の金額(もうけ)のパイは変わらない。 アルゼンチンの国内市場は、と畜した牛肉は全て流通し、流通した牛肉はすべて売 れる、いわばすばらしい市場ではある。
元のページに戻る