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回復が見られるフィリピン農業



【シンガポール駐在員 外山 高士 12月2日発】フィリピン政府は、このほど
99年第3四半期の国内総生産額について公表した。これによると、全体では99
年第2四半期の伸び率3.7%より低下し3.1%となったものの、農業生産額は
同年第2四半期に比べ5.6%増加し、前年同期比11.1%増となっており、前
年同期が3.1%の減少であったのに対し増加に転じている。
  
 これを1月から9月までの合計で見ると、99年は4,036億ペソ(1ペソ=
約3円)で、前年同期比13.1%増となっている。この金額は、通貨危機とエル
ニーニョなどの異常気象によって前年同期を3.2%下回った98年に比べて上昇
しているのみならず、97年の3,688億ペソをも上回っており、同国の農業が
回復に向かっていることを示していると、政府ではみている。
 
 農業省では、これらの増加の要因として、穀物の豊作を挙げている。特に穀物生
産額の14%を占めるコメは、第3四半期までの合計で見ると、98年の480万
トンから、99年は55%増の750万トンに、同じく6%を占めるトウモロコシ
は98年の290万トンから、99年は30%増の370万トンと、それぞれ大幅
に増加している。また、トウモロコシの99年の収量は、97年の340万トンを
上回っており、同省では、昨年実施したかんがい設備の改善と新しい改良品種の導
入、適度な雨量が増加の要因であると分析している。この結果、穀物全体の金額で
は、10.8%増となっている。
  
 また、畜産では豚肉の生産量の増加が大きく、前年同期比4.4%増となってい
る。農業省ではこの要因について、98年は、豚肉の輸入が増加したものの、異常
気象により気温があまり上昇しなかったことから、豚の繁殖が順調に進み、99年
の増加に結びついたものと分析している。さらに、水牛肉を含む牛肉と生乳の生産
量もそれぞれ増加したことから、畜産全体の金額では、5.0%増となっている。
  
 しかしながら、養鶏については、97年に過剰生産により価格が暴落したことか
ら、小規模養鶏農家を中心に生産意欲が減退したことや、現在は輸入禁止となって
いる、免税店を経由して輸入された安価な鶏肉など、国内生産費より安い鶏肉が多
く出回ったため、鶏卵を含む養鶏全体の金額は1.4%減と、畜産の中で唯一減少
となっている。
  
 政府では、国内総生産額について、第4四半期は4.2〜4.5%の伸び率を、
99年全体では3%の伸び率を確保できるものとしており、農業生産の伸びによる
今後の経済回復に期待をしているものとみられている。


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