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EUのロシア向け食糧援助の実施に遅れ


【ブラッセル駐在員 井田 俊二 2月18日発】EUでは、昨年12月に正式決
定したロシア向け食糧援助の実施手続きを進めているが、ロシア側から援助物資の
品質等に関する指摘があったことから、一時手続きを中断することとした。このた
め、食糧援助の輸送開始時期は3月以降になる見込みとなった。

 EUでは、98年12月に決定したロシア向け食糧援助の実施に向けて手続きが
進められており、2月上旬には物資の調達・輸送に関する初めての入札が予定され
ていた。

 しかしながら、今回ロシア側が、対象となる援助物資について品質および衛生基
準等の面で不十分であると指摘したため、予定されていた入札は一時中断されるこ
ととなった。

 EUは、98年8月に経済危機が発生したロシアから食糧援助要請を受けて、98
年12月に両国間で食糧援助の了解事項に関する覚書の調印を行った。さらに、99
年1月20日には、援助物資に関する条件等を規定した覚書の調印を行い、食糧支
援実施に向けた手続きを整備した。

 これによると、援助物資は、小麦(100万トン)、ライ麦(50万トン)、米
(5万トン)、牛肉(15万トン)、豚肉(10万トン)および脱脂粉乳(5万トン)
で、援助総額は約400万ユーロ(約544億円、1ユーロ= 136円)となった。

 主な援助条件は次の通りである。
・ロシア政府による援助物資の売り渡し
・ロシア議会における援助物資管理委員会の設置
・EUによる会計検査等の権利
・援助物資の再輸出禁止および不正発覚時のEUによる物資差し止めの権利

 また、援助物資は5回に分割して輸送することとし、99年上期までにすべて輸
送が完了することとしていた。

 今回、入札の実施が一時中断された第1回目の援助物資は、小麦(28万トン)、
ライ麦(10万トン)、米(1万5千トン)、牛肉(3万トン)、豚肉(3万トン)
および脱脂粉乳(1万トン)である。その調達方法については、豚肉を除く援助物
資は介入在庫から充当することとし、豚肉は一般市場からの買い入れ入札(ただし、
うち5千トンは民間在庫補助対象豚肉)により充当することとしている。これらに
ついては、2月上旬に援助物資の調達・輸送に関する入札(豚肉以外の物資につい
ては輸送条件に関する入札のみ)を実施し、輸送を行うこととしていた。

 しかしながら、今回、入札の実施が一時中断されたことから、当初2月に開始す
るとみられていた援助物資の輸送は、3月以降に遅れる見込みとなった。現在、EU
とロシアの間では問題解決に向けた調整が図られている。

 今回の食糧援助は、EUにおける畜産物需給の改善効果も期待されている。特に、
豚肉については、多くの加盟国での増産などに伴う需給の緩和により記録的な豚肉価
格の低迷が続いており、その追加対策が検討されている。なお、こうした状況の中、
EUはロシア向け豚肉調製品の輸出補助金を2月15日から引き上げた。



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