ALIC/WEEKLY


"ユーロ"とEU共通農業政策



【ブラッセル駐在員  池田  一樹  1月7日発】ドイツ、フランスなどEUの11加
盟国は、本年1月1日から単一通貨"ユーロ"を導入し、歴史的な通貨統合がいよいよ
始まった。EU共通農業政策(CAP)にもユーロが導入され、CAP独特の通貨制
度も廃止された。通貨統合の成否は、CAPに大きく影響する。今後問われるユーロ
の真価が注目される。

 ユーロ導入に伴い、CAPに基づく補助金単価や支持価格などは、従来用いられて
きた欧州通貨単位"ECU"ではなく、単一通貨"ユーロ"で設定される。この際、ECUから
ユーロへは1対1で変換される。例えば、バターの介入価格328ECU/100kgは、
今年から328ユーロ/100kgとなる。

 また、これらECU建ての補助金などを各国通貨に交換するために用いられてきたCA
P独特の交換レート(グリーンレート)が廃止された。

 通貨統合参加国では、既に通貨はユーロに一本化された。しかし、ユーロ紙幣・硬貨
が流通し始める2002年までは、各国の紙幣・硬貨が流通する。このためEUは、
12月31日にこれらの通貨の対ユーロ交換レートを、同日のECU相場に基づいて固定
した。CAPの補助金にも、グリーンレートに代わってこのレートが用いられること
となった。

 グリーンレートは、ECUの市場相場の変動に連動して複雑なルールで設定されてきた。
これが廃止されることにより、仕組み自体の複雑さや、変動相場制のため自国通貨で
の補助金の手取り額が年度内でも変化するなど、これまで議論の絶えなかったさまざ
まな問題も解消する。

主なユーロ導入国の対1ユーロ交換レート
ドイツ マルク    1.95583 オランダ ギルダー   2.20371
フランス フランスフラン    6.55957 ベルギー ベルギーフラン40.3399
 一方、イギリスなど通貨統合に参加していない国については、市場レートが用いら
れる。レートの採用期日は、CAPの個別制度により異なる。市場介入制度や輸出補
助金等には、その制度の適用を受けた日、頭数単位で支払われる奨励金は、当該年の
1月1日の市場レート(本年は1月4日)が用いられる。

 このように、CAP補助金を各国通貨に交換する際に、今年新たに用いられる交換
レートは、グリーンレートとの連続性がなく、異なる。したがって、グリーンレート
よりも切り上げられた加盟国では、自国通貨建ての補助金額等が減少する。このため、
生産者などの所得を補償する仕組みが導入された。

 介入買い上げなどの市場制度では、切り上げ幅が相当大きいと判断される場合に補
償が行われる。ただし、切り上げ幅の算定値が2.6%よりも少ない場合は除外され
ることもあり、本年は該当しないとみられている。一方、頭数当たりで支払われる奨
励金については、昨年に比べて切り上げられた場合に3年間継続して補償が行われる。
補償総額は国単位で算定され、2年目から3分の1ずつ削減される。EUの補助率は
初年度100%、次年度からは50%である。

 さらに、通貨統合に参加していない国については、2002年1月1日以前に年間
の対ユーロ平均交換レートが相当大きく切り上げられたと判断される場合には、今年
採られる補償措置とほぼ同様の措置が採られる。



元のページに戻る