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加、米国産肉豚の輸入規制緩和を実施


【デンバー駐在員 藤野 哲也 1月7日発】カナダは、オーエスキー病およびブ
ルセラ病が清浄である米国各州からの肉豚輸入について、これまで実施されてきた
30日間の検疫の中止を内容とする動物検疫規則の改正を行った。しかしながら、
その効果には疑問が持たれており、価格低迷に苦しむ米国養豚農家にとっては厳し
い状況が続くものと見込まれている。

 カナダ農業省は、オーエスキー病およびブルセラ病が清浄である米国各州からの
肥育豚輸入について、30日間の検疫の即時中止などを内容とする動物検疫規則の
改正を昨年12月に行った。

 これは、米国サウスダコタ州に端を発するカナダ産の生体牛、生体豚および穀物
の輸入規制に伴い、米・加両国政府間で締結された農畜産物市場開放対策の合意内
容の一つである。

 今回の改正によれば、輸入される肉豚については、米農務省(USDA)の承認
した獣医師がオーエスキー病およびブルセラ病について事前に検査を行い、これに
合格した旨の衛生証明書の添付が必要となる。また、肉豚運搬用のトラックは清掃、
消毒、封印された旨の証明書を携帯する必要があるとしている。

 輸入される肉豚は、カナダ内を8時間以上輸送されることが禁止されるとともに、
パッカーに直行することが義務付けられる。加えて、肉豚は、カナダ入国が認めら
れた後、24時間以内に、また、パッカー到着後4時間以内にと畜されることとな
っている。その後、運搬したトラックは、パッカー内で清掃、消毒が行われるとと
もに、運転手は衣服を交換することなどが求められる。

 今回の措置は、カナダのパッカーにとって米国産肉豚を受け入れる事実上初めて
のもとなる。しかしながら、カナダドルが米ドルに対して弱含みであることやオン
タリオ州第2位のパッカーであるクオリティ・ミートの昨年12月初旬からのスト
ライキに代表される労働争議などの現状からみると、カナダによる米国産肉豚の輸
入需要が高まるとは考えにくく、米国の養豚農家にとっては、朗報とは言えないの
が現状となっている。

 一方、米国のカナダからの肥育豚(110ポンド以上)輸入を見ると、98年1
〜10月までで227万頭となっており、97年同期の170万頭と比較すると33
%の大幅な増加となっている。米国産の肉豚出荷頭数の増加に加えてカナダからの
生体豚輸入も増加し続けていることから、パッカーの1日当たりと畜処理能力を上
回っていると言われており、これが肉豚出荷の阻害要因となっているとして米国の
養豚農家から不満の声が上がっていた。

 依然として、米国内では、記録的な肉豚価格の低迷に直面しているが、USDA
は昨年12月24日、養豚農家に対する支援対策を発表した。その内容は、@養豚
農家に対する10億ドル(約1千2百億円)に上る運転資金融資、A豚舎新設に係
るUSDAの融資保証の一時停止、Bオーエスキー病撲滅事業による肉豚淘汰、
C国内食料援助プログラムなどによる豚肉の買入れ促進、D海外援助および輸出信
用保証計画などの活用による輸出拡大などとなっている。生産者団体である全国豚
肉生産者協議会(NPPC)は、積極的な第一歩と評価しながらも、今後更なる対
策を講じるよう求めている。


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