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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 1月14日発】EU統計局は、今般、EUの 98年農業所得に関する見込みを公表した。これによると、EU全体の98年農業 所得は対前年比3.9%減少(物価変動調整後)と、2年連続して減少することと なった。豚肉をはじめとする畜産物産出額の下落を主な要因の1つとしている。 今般のEU統計局の公表によると、EU全体の98年農業所得は、全体で対前年 比3.9%減少すると見込んでいる。EUにおける近年の農業所得は、94年から 前年を上回って推移し96年には高水準の所得(90年および91年平均所得の20 %増し)を記録したが、97年には減少に転じた(対前年比▲2.7%)。98年 の農業所得は前年に引き続き減少したものの、なお90年および91年の平均農業 所得と比較して12%高い水準を維持している。 農業所得を算定する要素として最終農産物産出額について見ると、穀物や生鮮野 菜といった畜産物以外の作目では、ほぼ前年並み(同▲0.1%)を維持した。 一方、畜産物については前年を下回った(同▲7.2%)。これは、生産量が前 年を上回った(同1.3%)ものの、価格が前年を大きく下回ったためである(同 ▲8.4%)。また、産出額を品目別に見ると、品目ごとに差が見られるもののす べての品目で前年を下回っている。特に、豚肉については大幅に下回っている(同 ▲20.8%)。これは、96年のBSE問題発生および97年のオランダにおけ る豚コレラ大量発生等を背景として、加盟国における急速な豚の増産が図られる中 で、豚肉の主要輸出先であるロシアおよびアジア諸国における経済危機の発生に伴 い輸出先が限定された結果、EU域内における豚肉需給が大幅に緩和したことが要 因である。 98年の畜産物産出額等の対前年増減率は次のとおりである。 (単位:%)
生産量 | 価格 | 産出額 | 産出額比率 | |
牛 | -2.9 | 1.9 | -1.0 | 10.1 |
豚 | 7.1 | -26.1 | -20.8 | 10.0 |
羊、山羊 | -0.8 | -15.0 | -15.7 | 1.9 |
鶏 | 2.0 | -6.4 | -4.6 | 5.5 |
牛乳 | 0.0 | -1.2 | -1.2 | 18.0 |
卵 | 0.9 | -9.8 | -9.0 | 2.3 |
畜産物合計 | 1.3 | -8.4 | -7.2 | 49.6 |
(注)産出額比率は農産物全体に占める比率 また、このほか農業所得算定に当たり関連する要因の状況は次のとおりである。 ・ 飼料等の生産資材金額は減少 ・ 補助金は減少(前年比▲6.2%) ・減価償却費は97年並み ・農業労働者数は減少率がやや縮小したものの引き続き減少(前年比▲1.6%) なお、98年農業所得を加盟国別に見ると、デンマーク(対前年比▲22.3%) イギリス(同▲16.4%)をはじめ11カ国で前年を下回っている一方、スウェー デン(同9.0%)等4カ国で前年を上回っており、加盟国別に大きな差が見られる。
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