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酪農協の合併が進展(オセアニア)


【シドニー駐在員 野村  俊夫 1月14日発】世界の主要酪農国では将来の乳製品
販売競争の激化に備えて乳業メーカーの再編・合併が進められているが、オセアニア
でも大型の酪農協兼乳業メーカーの合併が進展しており、これらのメーカーは、従
来の酪農協としての枠を越えた広範な製造販売事業を展開しようと努力している。

 ニュージーランド(NZ)では、昨年末、北島中央部を基盤とする同国最大の酪
農協、ニュージーランド・デイリー・グループ(NZDG)と、南島の主要な酪農
協であるサウス・アイランド酪農協が、合併に基本合意した。今後、組合内部で正
式な手続きが進められ、NZの酪農新年度に当たる本年6月には、新たな体制がス
タートすると目されている。

 今回の合併により、NZ全体の約58%、年間約600万トンの生乳を加工処理
する巨大な酪農協兼乳業メーカーが誕生することとなる。

 今回の合併をめぐっては、北島南部を基盤とする同国第2の酪農協であるキウィ
酪農協が、NZDGと激しい争いを展開した。両酪農協は、昨年、ニュージーラン
ド・デイリー・ボード(NZDB)の機構改革をめぐる論議の過程で、NZDBに
よる乳製品の国家一元輸出体制を維持しつつ、輸出市場拡大の面では相互に提携す
るという戦略的な合意を行ったが、今回の合併をめぐる確執の後も、この基本姿勢
に変化はないとみられている。

 一方、豪州においても、昨年末、ビクトリア州を基盤とする組合系2大乳業メ―
カーの1つであるボンラック社(乳製品主体)と、タスマニア州最大の組合系乳業
メーカーであるユナイテッド・ミルク・タスマニア(UMT)社(同)が、合併に
合意した。こちらは、既に、組合員総会で正式な議決を得ており、豪州の酪農新年
度に当たる本年7月から新体制をスタートさせたいとしている。

 当該合併に伴い、年間生乳処理量が約240万トン、全国の約25%の集乳シェ
アを有する、豪州最大の乳業メーカーが誕生することとなる。

 今回の2件の合併は、それぞれ酪農協・乳業メーカーの将来を見越した長期戦略
の一環と言える。この背景には、規制緩和の進展により、組合系乳業メーカーと言
えども、多国籍の大手企業等との熾烈なシェア争いに食い込んで行かない限り、生
き残れなくなるという危機感がある。

 ちなみに、豪州ニューサウスウェールズ(NSW)州には、過去に多くの中小酪
農協を吸収合併し、今や外資系の大手飲料メーカーと激しくシェアを争う程にまで
成長した飲用乳主体の組合系乳業メーカー、NSWデイリーファーマーズ社がある。
同社は、組合系企業という既存の殻を打ち破って急成長を遂げた企業の1つである。

 同社幹部によると、7年前には同社の年間販売額約4億豪ドル(約292億円:
1豪ドル=73円)のすべてが飲用乳販売によるものであり、NSW州内への販売が
90%以上(輸出はゼロ)であったのに対し、昨年の販売額は約12億豪ドル(約
876億円)を超え、その60%以上が飲用乳以外の製品販売によるもので、かつ、
7%の輸出を含む州外への販売割合が50%を超えたとのことである。

 規制緩和の進展という状況の下、多くの組合系乳業メーカーは、生き残りをかけ
た長期的な事業戦略を推進しつつある。


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