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【シンガポール駐在員 外山 高士 1月14日発】 インドネシア政府は、昨年 12月から2ヵ月間、牛肉および生きた牛の輸入に係る関税を免除すると発表した。 これは、年末からの需要期に、供給不足を起こさないための措置であるが、牛肉価 格の引き下げ効果も期待されている。 インドネシア政府は、生きた牛および生鮮・冷蔵牛肉、冷凍牛肉に係る関税を昨 年12月から2ヵ月間に限り免除することを発表した。 この措置には、牛肉のほかに砂糖、小麦粉、パームオイルなどの品目も含まれて おり、先月のクリスマスより始まっている一連のお祭りによる特定物品の需要に対 応するための措置で、特に、今月中旬のイスラム教のお正月(ハリラヤ・プアサ) による需要急増に対応するためのものであるとみられている。 同国政府によると、首都ジャカルタ市で消費される牛肉は、1日当たり800頭 程度であるが、昨年の通貨危機により、豪州などからの肥育素牛の輸入が十分に行 われなくなった結果、国内生産量が減少し、昨年12月におけるジャカルタ市での 平均と畜頭数は、300頭程度と需要量を大幅に下回る水準となっていた。このた め、ある市場では、300人いる牛肉小売業者のうち、実際に牛肉を買い付けでき るのは80人だけとなるなど、深刻な供給不足となっている。 また、昨年の場合、ハリラヤ・プアサの前後4〜5日間で、約1万頭分の牛肉が 消費されていることから、物価の上昇により購買力が低下していることを考慮して も、1日当たり約2千頭、期間中の合計で、約8千頭分以上の牛肉が必要であると 見積もられており、国内生産量を大幅に上回るものとみられている。 一方、牛肉の小売価格は、平均で1s当たり2万6千ルピア(100ルピア=約 1.5円)から2万7千ルピア、テンダーロインなどの高級部位は3万ルピア程度 となっており、昨年と比べて1千ルピアから2千ルピア程度値上がりしている。ま た、伝統的に牛肉の卸売りは現金での取り引きとなっていることから、十分な資金 を持っていない小規模の小売業者は、牛肉の買い付けが困難になっており、このこ とが一層の供給不足を起こす要因の一つとなっている。 同国政府は、この関税の免除のほかにも、供給量を増加させるため、豪州から輸 入する3万頭を含む5万4千頭の肥育素牛の輸入に対する補助金を出しているが、 輸入飼料の価格も上昇していることから、肥育素牛は実際にはほとんど輸入されず、 今回の需要期には間に合わなかった。このため、輸入飼料に係る付加価値税につい ても、今回の免税措置と同時に免除することとしており、今後これらの措置により、 牛肉の供給量が増加し、価格が下がることが期待されている。
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