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【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 6月17日発】6月3日から4日にかけ て、次期世界貿易機関(WTO)交渉における酪農部門に関する国際シンポジウム が、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催された。同シンポジウムで、アル ゼンチンは国内支持および輸出補助金の削減、市場開放等を訴えた。 今回の国際シンポジウムは、国連食糧農業機関(FAO)、国際酪農連盟(ID F)、中南米主要国による酪農団体パンナム酪農連盟(FEPALE)の共同主催 にて行われた。冒頭あいさつで、IDFのコザック会長は、本会議の意義に触れ、 次期WTO交渉の開始となる本年11月開催予定のWTO閣僚会議(シアトル)を 5ヵ月後に控え、次期交渉をどのようにまとめ上げて行くのか、各国の代表が非公 式に議論する場を設けたことは大いに意義があると述べた。 アルゼンチン農牧水産食糧庁ノボ長官は、ホスト国を代表したあいさつの中で、 次期WTO交渉に向けて協議すべきテーマとして、@農業部門の交渉はそれ自体で 行われるべきであること、A国内支持および輸出補助金が削減されること、B市場 開放が行われることを掲げた。 各国が行った意見表明の中で、アルゼンチンの業界団体である乳業センター(C IL)のジェームス会長は、EUが価格支持政策により生産過剰となった乳製品に 輸出補助金を付け輸出を行ったことが、アルゼンチンの乳製品の競争力低下につな がったと主張した。また、95年に発足したメルコスール(南米南部共同市場)に より市場が拡大されたにもかかわらず、アルゼンチン乳業における全生産能力が活 用されていないといった背景を語り、国際市場の開拓が、アルゼンチン乳業の今後 の成長を維持するために不可欠な要素であると述べた。同氏は特に、輸出補助金に ついて、@撤廃時期の明確化、A対象となる製品の輸出量およびそれらに割り当て られる予算の段階的削減、B各製品のFOB価格に占める輸出補助金の割合に上限 を設定する必要性を強調した。 98年(暦年ベース)のアルゼンチンの生乳生産量は約960万トン、輸出量は 約140万トンであり、その多くが対ブラジル向け輸出である。しかし、99年1 月のブラジルの通貨切下げの影響により、同国向け輸出価格が低下した。また、ア ルゼンチンの生乳生産が好調であることなどにより、アルゼンチン乳業界は、新た な国際市場の開拓に意欲を示している。こうした状況下で、アルゼンチンでは、今 後さらに市場開放へ向けての議論が活発化するものとみられている。 また、8月下旬には、アルゼンチンにおいてケアンズ・グループの閣僚会議が開 催される予定である。農産物輸出国で構成されるケアンズ・グループの今後の動向 も注目されるところである。
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