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【シンガポール駐在員 外山 高士 6月17日発】シンガポールでは、ベルギー で発生したダイオキシン問題で欧州からの肉、卵、牛乳およびそれらの加工品の輸 入・販売が禁止されている。このため、乳幼児用の粉ミルクをはじめとする乳製品 の品不足が発生し始めている。豪州などからの輸入はあるものの、今後の価格上昇 が懸念されている。 シンガポールは、ベルギーで発生したダイオキシン問題を理由に、6月4日から 欧州産の肉、卵およびそれらの加工品の輸入・販売を禁止した。また、翌5日には この対象を牛乳および乳製品にまで拡大する措置を取っている。その後、8日には 1月19日以前の製造品については、安全が確認されたことから、これらの輸入・ 販売を認めることとした。 シンガポールは、その国土が狭いことから、多くの食料を輸入に依存している。 牛乳および乳製品についても、国内には3戸の酪農家があるのみで、国内での需要 のほとんどを輸入品で賄っている状況となっている。97年における同国の牛乳お よび乳製品の輸入金額は、約3億9千万シンガポールドル(1シンガポールドル= 約71円)となっており、国別に見ると豪州からの輸入が最も多く全体の約30% となっている。次いで欧州から約28%、ニュージーランドから約15%、マレー シアから約13%を輸入している。脱脂粉乳では欧州からの輸入量が最も多く、9 7年では約1万8千トンと、豪州の1万7千トンを上回っている。 このような状況の中、今回の禁止措置が実施されたことから、同国内で乳製品の 品不足が発生し始めている。特に、乳幼児用の粉ミルクは、スーパーマーケットの 陳列棚からなくなるなど、深刻な状況である。また、これらの粉ミルクは、幼児の 好みもあり選択の幅がかなり狭いものであることから、特定銘柄が購入される傾向 にある。このため政府が現在輸入・販売されている豪州産の粉ミルクの銘柄を公表 し、欧州産からの切り換えを促したものの、これまで購入してきた欧州産粉ミルク で1月19日以前に製造されたものを買い占めるなどの動きが見られ、欧州産を中 心に品不足となっている。 一方、スーパーマーケットなどの小売店では、粉ミルクのほか、ビスケット、チ ョコレートなどの商品を撤去した空の陳列棚に販売を中止している旨の張り紙を急 きょ張り出すなどの対応をしている。また、政府からの正式な販売禁止が夜遅く発 表されたこともあり、翌朝になって混乱を来しているところもあった。国立大学病 院などの産婦人科においても、それまで使っていた欧州産の粉ミルクを急きょ別の ものに取り換えるなど、対応に追われている。同国政府は、豪州など他の国からの 輸入で、十分賄えるとの見方をしているものの、3月から続いているマレーシアか らの豚の輸入禁止に伴う豚肉の価格上昇と同様の現象が乳製品分野でも起こり得る として、今後の乳製品の価格上昇が懸念されている。
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