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EUがデンマークと畜業者の合併を承認



【ブラッセル駐在員 井田 俊二 3月25日発】EU委員会は、デンマーク最大の
豚と畜業者であるデニッシュ・クラウン(Danish Crown)と第2位のベストジュスク・スローテリア
(Vestjyske Slagterier)の合併を承認した。ただし、EU委員会は合併の承認に当たり、
同国における豚と畜業等の寡占化による悪影響を排除するための改善条件を提示した。

 この大規模なと畜業者(いずれも協同組合)の合併は98年9月に公表され、その
後EU委員会に対して承認の申請が行われていた。
 
 EU委員会は、98年11月、両組合の合併後、デンマークにおける豚肉と畜業が適正
な市場競争を維持できるか調査を実施した。調査対象は、合併に伴う豚と畜業のほか
生肉流通および副生物取引にまで及んだ。この調査の結果、合併による市場の寡占化
が、適正な市場競争を阻害し、消費者および同業者に対し不利益をもたらす恐れがあ
るとの結論に達した。このため、EU委員会は、合併の承認に当たり両組合に対し次
の通り調査結果および改善条件を提示した。

@豚と畜業
 両組合合併後の年間と畜頭数は全体の76%(約1千6百万頭)を占め、組合員で
ある豚生産者にとって出荷先の選択が制限されている。さらに、生産者は組合に対し、
一定期間豚の出荷義務を負うことから、ドイツをはじめ近隣諸国への生体豚の出荷が
制限されている。

[改善条件]
・組合員である豚生産者は、6カ月前の通知により1週間当たりの出荷頭数の15%
まで他のと畜業者に出荷できる。また、組合を脱会する事前通知期限を12カ月に短縮
(現行は12〜24カ月)する。

A豚肉の流通
 スーパーマーケットを通じた豚肉の販売量のシェアは、デニッシュ・クラウン(20〜25%)、
ベストジュスク・スローテリア(15〜20%)およびシュテフ・フベルク(Steff Houberug 25〜30%)で全
体の70%を占めているが、合併後は新しい組合で半分近くのシェアを占める。また、現
行ではと畜業者間で豚肉の仕入および生産コストに大差がなく、一部の販売ルートは大
手と畜業者による独占的支配下にあることから、と畜業者間で市場を反映した適正な価
格決定が困難な状況になるとみられる。

[改善条件]
・デンマーク豚肉輸出機構連合              (Danske Slaghterier,DS)による週間相場価格の
  情報提供廃止。
・ 輸出価格が国内市場に大きな影響を及ぼすことから、デニッシュ・クラウンなどは豚肉輸出会
社(ESS Food)の共同経営を解消する。

B副生物の取引
 両組合の支配下にあるDaka社で全体取引量の80%を占めており、小規模と畜業者がDaka社
から差別を受ける可能性がある。

[改善条件]
・同組合によるDaka社支配の中止。

 デンマークの豚と畜業は、EUで最も再編が進んでいる。同国における豚と畜業者数の
推移は次の通りである。
  1970 1980 1990 1997
DS会員数 54 20 6 4
(プラント数) (60) (36) (27) (22)
協同組合 50 18 5
私営 4 2 1 0
DS会員以外(私営) - - 7 8
注:DS会員以外は、年間1万4百頭以上のと畜業者



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