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生体豚の輸入を全面禁止に(シンガポール)



【シンガポール駐在員 外山 高士 3月25日発】シンガポール政府は、マレー
シアでまん延する日本脳炎の対策として、マレーシアなどからの生体豚などの輸入
を、全面的に禁止することを発表した。国内で消費されている豚肉の多くをマレー
シアからの生体豚輸入に頼っていることから、今後の供給不足が懸念されている。

  シンガポール政府は、マレーシアでまん延する日本脳炎の対策として、これまで
地域を限定して禁止していたマレーシアおよびインドネシアからの生体豚の輸入を、
全面的に禁止することを発表した。また、マレーシアとシンガポールとの間で交互
に開催している競馬についても、当分の間シンガポールでの開催を中止し、マレー
シアからの競走馬の輸入を禁止するほか、犬や猫など、鳥を除く生きた動物すべて
の輸入を禁止すると発表した。

  これは、シンガポール国内にあると畜場の職員や、そのと畜場を利用する卸売業
者など数名が、日本脳炎と疑われる症状を示しており、うち1名が死亡する事態が
発生したためである。政府はこのと畜場の職員2名の発病が確認された18日から
このと畜場を閉鎖したが、もう1カ所あると畜場についても、死亡者の出た19日
に閉鎖をしており、事実上、生体での輸入は出来ない状況となっていた。同国政府
によると、この輸入禁止とと畜場の閉鎖措置は、マレーシアでの状況が改善される
まで継続することとしている。

  昨年からマレーシアでまん延している日本脳炎に対し、シンガポール政府は3月
初旬から、この病気の発生しているペラ州とヌグリ・スンビラン州の農場からの豚
の輸入を禁止する一方、輸入される豚に生産農場の入れ墨を行うことの徹底を図っ
ていた。また、国内にある2カ所のと畜場職員約550名に対して、ワクチンの接
種を行い、この病気の伝染を防ぐ措置を講じてきていた。

  シンガポールはその狭い国土のため、環境問題に配慮して養豚業を90年に全面
禁止しており、同国で消費される豚肉のすべてを輸入に頼っている。97年に輸入
された豚肉は、部分肉換算で約5万2千トンであるが、同国の中華系住民の割合が
約8割を占めていることなどから、生鮮豚肉への需要が強く、マレーシアからの生
体豚によるものが約4万7千トン(104万頭)と、輸入量全体の90%を占めて
いる。このため、既にスーパーマーケットの店頭から豚肉がなくなるなど、供給不
足が懸念されているが、同国政府は、今回のマレーシアでの日本脳炎のまん延によ
り、既に豚肉の消費量が40%以上減少していることから、当面は豪州などからの
冷凍豚肉によって、需要は賄えるとの見方をしている。

  また、タイの養豚業界では、これまで価格競争力が弱くシンガポール市場に参入
できなかったものの、最大供給源であったマレーシアがなくなったことで、特に米
国や豪州などと競合しない生鮮豚肉の輸出市場としての期待が高まっている。しか
し、両国間には口蹄疫などの動物検疫の問題が多く残っており、タイ産生鮮豚肉の
輸入には、まだ時間がかかるとの見方が強いようである。

  なお、日本では、マレーシア、インドネシアおよびタイからの生体豚、豚肉など
の輸入は認められていない。


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