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インドからの牛肉輸入を容認(フィリピン)



【シンガポール駐在員 外山 高士 5月6日発】フィリピン政府は口蹄疫の清浄
化を計画しているが、この病気に汚染されている可能性が高いインド産の水牛肉を
引き続き輸入することとしている。国内で高い需要があるためだが、口蹄疫の清浄
化促進を妨げるものとして畜産農家などでは強く反対している。

 フィリピン政府は、口蹄疫の清浄化による食肉加工品の輸出拡大を計画している。
今般、その計画の一環として、口蹄疫に汚染されている可能性が高いインドからの
水牛肉について輸入禁止を検討していたが、牛肉加工業者組合などから、豪州産な
ど他の国の牛肉を使用すると価格が30%程度上昇するとして強い反対を受けたこ
とから、当面はインドからの輸入を続けることとした。
 
 同国における牛肉の消費量は、近年の急速な経済発展と欧米的な食生活の浸透に
より、急速に増加している。同国農業省の統計によると、92年において水牛を含
めた牛肉生産量は16万8千トン、輸入量は1万5千トン、1人当たりの消費量は
2.8sであった。97年における生産量は22万8千トン、輸入量は7万トン、
1人当たりの消費量は4.2sといずれも大幅な増加となっている。また、輸入量
は、インドからの水牛肉の輸入が始まった94年から急増しており、92年にほと
んどなかった水牛肉の輸入量も94年は9千トン、95年は1万7千トン、96年
は2万4千トン、97年は3万トンと増加している。
 
 コンビーフなどの牛肉加工業者は、豪州産や米国産よりも安価であるインド産の
水牛肉を多く使用している。また、国内の牛飼養農家は小規模な経営が多く、安定
的な出荷が望めない状況となっている。現在の製品価格の水準を維持するためにも、
インド産の水牛肉は同国の牛肉加工業にとって必要不可欠なものとなっており、今
回の輸入継続の決定もこれら業者の強い要望の結果を示しているものとみられてい
る。

 一方、養豚農家組合や豚肉加工業者などは、豚肉加工品の輸出の可能性が低くな
るとして、同国の口蹄疫清浄化の妨げとなる、非清浄国からの水牛肉の輸入に反対
している。しかしながら、農業省では、輸入継続の理由として、インドからの輸入
はこの病気の発生していない地域に限定しているとしており、養豚農家組合などと
対立している。

 同国政府が口蹄疫の清浄化のため、ワクチンの購入費などを今年度予算に計上す
る一方で、98年の水牛肉の輸入量は、97年の約2倍に増加しているとも言われ
ている。国際市場への進出を狙う同国養豚業界では、今回の決定に強く反対してい
る。


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