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【シンガポール駐在員 外山 高士 5月20日発】 マレーシアでは、価格統制 品である鶏肉の価格が高騰している。これは、豚を媒介とする日本脳炎などの伝染 病の流行により、豚肉の需要が鶏肉に移ったためである。同国政府は、統制価格を 守るよう指導を行っているものの、事態の収拾にはまだ時間がかかるものとみられ ている。 マレーシアでは、供給の安定と物価高騰の抑制を目的として、鶏肉などの食料品 をはじめとする13品目を価格統制品に指定し、政府の決定する価格以下で販売す ることを義務付けている。鶏肉については、生きた鶏と中抜きと体において、農家 販売価格、卸売価格、小売価格のそれぞれに統制価格が決定されており、現在の中 抜きと体の小売価格は、1s当たり6リンギ(1リンギ=約32円)となっている。 同国においては、昨年10月から豚を媒介とする日本脳炎などの伝染病が流行し、 国内での死亡者が100名を超える非常事態となった。このため、国内における豚 肉の消費が急速に減少し、この需要が鶏肉に移動したことから、鶏肉の需要が急増 したものであり、同国政府によると前年比30%を超えて増加しているとみられて いる。 このことから、鶏肉の小売価格が高騰しており、クアラルンプール市内において も、旧正月明けの3月上旬に1s当たり4リンギ程度であった中抜きと体の小売価 格は、6.8リンギと政府の統制価格を上回っている。 同国の消費者団体などは、国内の需要を賄うため、国内で1日に生産される鶏約 100万羽のうち、約2割を占めるシンガポールなどへの輸出を停止するよう政府 に申し入れを行った。しかし、両国間の関係を悪化させる恐れがあること、豚肉需 要が回復した際に新たな鶏肉輸出先を見つけだすことが困難であることなどから、 政府はこの申し入れを拒否している。 同国政府は、小売業者などに立入検査を実施して統制価格を守るよう指導を行う とともに、国内需要を満たすため、タイから約200万羽の初生ひなと約900ト ンの冷凍鶏肉の輸入などの対応を行っている。しかし、これらのひなが実際に市場 で鶏肉として出回るまでには、最低でも1ヵ月以上の日数がかかること、イスラム 教の教えに従った処理を行った鶏肉でなければイスラム教徒が購入しないことなど の理由により、輸入鶏肉の価格が国産よりも高価になることから、実際に価格を引 き下げる効果を発揮できないでいる。 一方、養鶏農家においては、通常50日齢、生体重2.5sで出荷していたもの を、2週間ほど飼育期間を短縮し、36日齢、生体重1.6sで出荷するなど、増 産への対応に追われている。鶏肉への強い需要は、豚肉に対する消費者の信頼が回 復するまでは続くものと予想されており、事態の収拾にはまだ時間がかかるものと みられている。
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