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【シドニー駐在員 野村 俊夫 10月28日発】豪州の首都キャンベラでは、2 7日から3日間の日程で、政府主催による豪州地方サミットが開幕した。 同サミットは、近年、地方部の過疎化や経済・文化面の停滞がますます深刻化し、 大都市との格差が拡大している問題について話し合うため、副首相兼・運輸・地方 サービス担当であるアンダーソン大臣が招集した。 同サミットの議題は、地方部における経済の活性化はもとより、通信、輸送、雇 用、税制、医療、教育、文化など広い分野にわたっており、各界を代表する約30 0人が参加した。 豪州は、わが国の約21倍に相当する広大な国土を有し、そのうち不毛乾燥地帯 を除く全国土の約60%が牛や羊の放牧を中心とする農畜産業に利用されている。 しかし、人口は国全体で約1千8百万人(わが国の約7分の1)にすぎないうえ、 その大部分は海岸の大都市に集中しているため、内陸の広大な地域では若年層を中 心とする過疎化が極めて深刻な問題となっている。 また、サービス業はもとより、第1次産品を主原料とする製造加工業も、インフ ラや労働力確保の面で有利な大都市に集中する傾向にあるため、地方部は、産業経 済面でも停滞を余儀なくされている。 これに追い討ちをかけたのが、94年に導入された国内産業競争政策(NCP) であった。政府は、同政策の下で経済合理化を進め、農産物の流通・価格自由化や 公営サービス企業の民営化などを進めた。このため、効率の劣る地方部への投資が 大幅に削減され、大都市との格差をますます拡大させることとなった。 その結果、地方部では政府に対する住民の不満が募り、クインズランド州選挙で 極右政党が躍進したほか、先月実施されたビクトリア州選挙でも、地方部で政府批 判が高まり、予想外の政権交代を招いて、関係者に衝撃を与えた(ビクトリア州の 政権交代は、豪州の酪農乳業制度改革の推進に影響を及ぼす可能性があり、この面 からも注目を集めている)。 こうした状況の中で今回のサミットは、豪州の抱える地方部の問題を初めて中心 に据えて討議するものであり、長期的な視野に立った抜本的な対策の検討が求めら れている。 会議冒頭、アンダーソン大臣は、1千5百万豪ドル(約10億円、1豪ドル=6 8円)の地方振興基金を設けると発表し、産業界に対しても、地方部への投資財源 として合計1億豪ドル(約68億円)の拠出協力を求めた。 しかし、地方部の側からは、経済面に偏重した従来型の政策に対する批判も挙が っている。これらの者は、現実の地方部の生活を、不毛な乾燥気候になぞらえて "文化的な砂漠"と表現し、地方問題の解決は、経済面のみならず文化面における絶 望的な疎外からの開放が不可欠と主張している。地方部の再生を掲げた今回のサミ ットが、どのような具体的成果を挙げられるか、注目を集めている。
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