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【シンガポール駐在員 外山 高士 11月4日発】シンガポール政府は、11月 1日からすべての豚肉小売店に、冷蔵陳列棚の設置義務化を開始した。 豚肉の小売店は、政府による営業許可証が必要となっているが、これまでの許可 証は10月31日までで無効となり、新たに許可を取り直さなければならない。こ の際、政府公認の冷蔵陳列棚の導入が、許可の条件となっている。なお、電源供給 のための工事など、大規模な修繕工事を行っているところについては、その工事が 終了するまでの間、アイスボックスなどを用いての一時的な営業が許可されている。 同国では、昨年10月頃から隣国マレーシアで発生した、豚を媒介とするウィル ス性脳炎のため、それまでマレーシアの生体輸入のみに頼っていた豚肉の供給先を、 豪州などの冷蔵肉に切り替えていた。また、99年3月には、マレーシアから輸入 された豚のと畜作業を行っていた作業員11人が、ウィルス性脳炎に感染し、うち 1名が死亡したことから、マレーシアからの生体豚の輸入を全面的に禁止した。現 在生体での輸入が許可されているインドネシアからのものについても、と畜後冷蔵 庫で冷却してから流通させており、これまでの温と体(おんとたい)から冷蔵へと、 豚肉の流通形態が大きく変化している。 今回の措置も、この流通形態の変革の一環で、今後、鶏肉小売店については20 00 年5月1日から、羊肉と牛肉小売店については2000年11月1日から、 それぞれ冷蔵陳列棚の導入が義務化されることとなっている。 また、これまで消費者が、温と体流通に慣れ親しんでいたことから、政府では、 冷蔵肉の取り扱いについての基礎的なアドバイスを公表している。これによると、 @肉の保存は冷蔵庫で行うこと、A肉の保存は4度で5日間もしくはマイナス18 度で2週間までが目安であること、B冷凍肉の解凍は、常温ではなく冷蔵室か電子 レンジを用いること、C一度解凍した肉は再凍結させずに、3日以内に食べてしま うこととされている。 一方、冷蔵陳列棚を導入した豚肉小売店では、その取り扱いに苦労している。政 府は、陳列棚内部の温度が4度の均一な状態となるフラットベッド型のもののみを、 公認の陳列棚としているが、店によっては、陳列棚の中に豚肉を並べきれず、重ね ておくと肉色が変化して売れなくなってしまうことから、陳列棚の中にカギでつる したり、別に保管用の冷蔵庫を購入したところもある。また、肉の取り出し口は、 その都度閉めることとなっているため、売り手側、買い手側双方から、取り出しな どに時間がかかりすぎるとの不満が出ている。 しかしながら、多くの消費者からは衛生的になったと好評で、豚肉の流通形態の 変化は、同国社会に、おおむね受け入れられているようである。
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