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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 11月11日発】米商務省(DOC)は10月 日、カナダからの生体豚の輸入に関する相殺関税指令EU委員会は、10月26日、 EU域内で乳牛向けに販売・使用が禁止されている牛ソマトトロピン(BST)に ついて、2000年1月1日以降も引き続き禁止することを提案した。この提案で は禁止期限は定めておらず、提案が承認された場合、今後永続的に使用が禁止され ることとなる。EU委員会は、提案の理由としてBSTを乳牛に使用した場合にお ける動物の健康・愛護面での問題点を挙げている。このため、BSTを使用した乳 牛から生産された牛乳・乳製品の輸入については、影響を及ぼすことはないとして いる。 BSTは、乳牛に投与すると乳量が10〜15%程度増加する効果があるホルモ ンで、米国などで使用されている。しかしながら、BSTを使用した場合、乳牛の 乳房炎発生率の上昇、四肢の障害などの弊害があることが報告されている。 EUでは、理事会決定(90/218/EEC)に基づき、90年からBSTの 販売・使用を禁止した。さらに94年には、同理事会決定を改正し、禁止措置を9 9年12月31日まで延長することを決定している。 今回の提案に先立ち、EUの家畜衛生および動物愛護に関する科学委員会は、9 9年3月、動物の健康・愛護の側面からBSTが乳牛に及ぼす影響に関する報告を 行った。これによると、BSTを使用した乳牛は、四肢障害の増加や、乳房炎発生 率の明らかな上昇(発生率が15〜79%上昇)がみられる。さらに、乳牛の繁殖 面において、受胎率の低下、懐胎期間の短縮、多胎出産率の増加等の影響がみられ ると指摘している。このため、動物の健康・愛護の側面から、乳牛へのBSTの使 用を全面的に禁止すべきであると結論付けている。 EUでは、98年に理事会指令(98/58/EC)を定め、動物愛護面から家 畜を保護するための包括的条件を整備した。今回の提案は、こうした状況を背景と した同科学委員会の報告に基づくものである。 なお、EU委員会は、99年3月、公衆衛生面からBSTを使用した乳牛から生 産された牛乳・乳製品が消費者の健康に及ぼす影響に関する報告を公表した。この 報告では、BSTと腫瘍(しゅよう)の発現との関連性について指摘している。し かしながら、EU委員会はその信頼性についてはさらに十分な研究が必要であると 結論付けている。 BSTを使用した牛乳・乳製品の安全性については、98年3月、FAO/WH O合同専門委員会が適正量の使用であれば無害であると報告した。また、99年8 月のCODEX会合では、結論には至らなかったものの、牛乳・乳製品中に含まれ るBST残留許容量の国際基準設定について検討された。 EU委員会は、今回の提案においてBSTの安全性に関して明言しておらず、依 然として慎重な姿勢を崩していないものとみられる。
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