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EU委員会、フランスの牛肉禁輸に対し法的措置



【ブラッセル駐在員  島森 宏夫 11月18日発】EUにおける牛海綿状脳症(BSE)
の発生に伴うイギリス産牛肉の輸出禁止措置は、8月に解除されたが、フランスは、なお
安全性に不安があるとして独自に輸入禁止措置を継続している。11月16日、EU  委
員会はフランスをEU規則違反として欧州裁判所に提訴するための法的手続きを開始する
と発表した。その第1段階として、EU委員会のバーン公衆衛生および消費者保護担当委
員は、フランス政府に対し、2週間以内にその立場を公式表明するよう要求した。

 EU委員会は、フランスがその根拠として挙げた同国食品安全庁(AFSAA)の報告
書について、新たな科学的根拠はなく、生年月日に基づく輸出措置(DBES)で管理さ
れるイギリス産牛肉は安全であることを再確認していた。また、イギリス、フランス間の
話し合いの場を設定し、解決を模索してきた。しかしながら、両国間の話し合いでも、フ
ランスは輸入解禁へ動き出さないため、法的措置の実施を決めた。

 その一方で、バーン委員は2国間協議による解決に期待する旨発言し、この法的措置の
発動開始は、問題の早期解決へ向けた促進剤との見方もある。フランスとの話し合いに関
し、イギリスは、DBESによる牛肉管理制度の強化に対しては強く反対しているが、
(原産地)表示方法については譲歩の余地があるとしている。

 また、EU委員会は、フランスと並んでイギリス産牛肉の禁輸を続けるドイツに対して
は、いつ輸入を解禁するかの予定を示すよう求めている。

 なお、EUの法規違反に対する手続きは次のように行われる。

1  加盟国に対してEU法規違反が疑われる場合には、誰もがEU委員会に申し立てを行
える。この申し立てに基づき、または独自にEU委員会がEU法規違反の可能性を認めた
場合、EU委員会は、法規違反であることを見極める材料として、事実および法規の要点
を正確に把握するため、関連情報を収集する。

2  EU委員会が、EU法規違反に対する法的措置を開始する必要があると判断した場合、
委員会は当該加盟国に見解の提出を要求する公式通知文書を発出する。加盟国はEU委員
会が任意に設定する期限内(通常2ヵ月であるが、時には1週間未満の場合もある。)に
事実および法規の要点に対する立場を明らかにしなければならない。

3  当該国からの回答に照らし、または回答が期限内に得られなかった場合、EU委員会
はなぜ法規違反であると考えるかの理由を明確にした「道理ある見解(reasoned opinion)」
を発表する。併せて、当該国に対し委員会が任意に設定する期限内に法規に従うよう勧告す
る。この公式連絡は確かに法規違反があることを確認するためおよび違反があれば欧州裁判
所に持ち込むことなく早急に問題解決を図るためのものである。

4  当該国が「道理ある見解」に従わない場合、EU委員会は欧州裁判所に提訴し、欧州裁
判所が法規違反の有無を裁定する。裁定が下されるには約2年かかる。その後も当該国が法
規違反を続ける場合は、EU委員会は欧州裁判所にペナルティを行うための再提訴を行うこ
ととなる。






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