ALIC/WEEKLY
【シドニー駐在員 藤島 博康 11月19日発】中国と米国の2国間閣僚協議の 合意により、中国の世界貿易機関(WTO)加盟が確定的になったことから、豪 州では対中輸出の拡大が期待されている。ヴェイル貿易大臣は、WTO下での中 国の関税引き下げによって、輸出の中でも特に農産物や加工食品の拡大が見込ま れ、地方農村社会に大きな恩恵をもたらすと歓迎の意を表明している。 豪州政府によると、これまでの交渉過程からすると、中国の農産品に対する関 税は、現行の平均31.5%から、2004年には14.5%まで低下し、羊毛、 砂糖、牛肉、羊肉、乳製品など広範にわたる農産品や加工食品の対中輸出拡大に 大きな影響を及ぼすものとみている。ヴェイル貿易大臣は「牛肉の関税は現行の 45%から10%へ、加工食品は同様に50%から12%に低下する」と、中国 のWTO加盟による効果を説明している。 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)のバーナード経済企画総括部長は「中国 国内の牛肉需給バランスが比較的安定していること、家庭レベルでの牛肉消費増 加には所得増加など国全体の経済成長を待たなければならないことなどから、関 税低下が直ちに輸出増加に結びつくものではない」としながらも、将来的には大 きな輸出市場に成長する見込みはあると語っている。 豪州貿易促進庁では、この11月から、中国、ベトナム向け生体牛輸出促進を 目的に現地より関係者を招き講習会を開催している。中国での流通インフラの状 況などからすると、輸入牛肉への需要はごくわずかな大都市に限定されることも あり、中長期的には、フィリピンやインドネシア市場などと同様に、まずは生体 牛の輸出市場として脚光を浴びる可能性もある。このような状況で、今回の米中 合意は、心理的な側面からも豪州サイドの輸出意欲を後押しするものとみられる。 一方、現在、数量規制を受けている小麦や大麦などの品目は、今後、数量規制 の緩和、民間貿易割合の増加が見込まれており、豪州産品の輸出拡大が期待され ている。豪州の小麦輸出のすべてを取り扱うAWB社では、現在の2百万トン程 度の輸出が、今後数倍に拡大する可能性もあるとして、中国のWTO加盟に大き な期待を寄せている。 外務貿易省の97年当時の試算によると、WTO加盟によって、中国の国民総 生産(GNP )は2020年までに4.6%増加し、これによって豪州のGN Pも1.8%引き上げられることになると予測している。豪州、中国の2国間貿 易は、過去10年間で大きく増加する傾向にあり、豪州からの輸出、中国からの 輸入ともに豪州全体の輸出入の成長率に比べ、2倍前後の勢いで拡大している。
元のページに戻る