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【デンバー駐在員 樋口 英俊 11月16日発】米国際貿易委員会(ITC) は11月9日、カナダ産生体牛輸入のダンピング問題について、当該産品の輸 入によって米国の肉牛産業は実質的な損害を受けておらず、また、損害を受け る恐れもないとして、米商務省(DOC)が10月13日に発表したダンピン グ認定を覆し、これをシロとする決定を下した。 決定理由の詳細はまだ明らかにされていないが、@米国の牛肉市場規模と比 較してカナダ産生体牛の占める割合が少ないこと、Aカナダ産生体牛が生産コ ストを下回る価格で販売されたとしても、その価格は自由な取り引きの下で形 成されたものであることなどの要因が勘案されたものとみられている。98年 について見ると、米国の牛肉の総需要量に対してカナダ産生体牛の占める割合 は、3.7%にすぎなかった。 DOCは10月13日、米国の肉牛生産者団体の1つである牧場主・肉用牛 生産者行動法律財団(R−CALF)からのカナダ産生体牛などに対するアン チダンピング提訴を受けて調査を実施し、これをダンピングとする同省の最終 決定を発表していた。 これにより、カナダ産生体牛の輸入に対しては、ITCの判断が下されるま での間、個別に関税率が示された6社を除き、5.63%のアンチダンピング 関税が暫定的に課されていた。今回の決定に従って、当該関税の適用は中止さ れ、既に徴収された関税は、納税者に対して返還されることになる。 カナダのバンクリフ農業・農産食料相は、ITCの決定を「論理的に唯一可 能な結論」と述べ、「今後アンチダンピング関税を支払う必要がなくなり、通 常の競争条件で生体牛を輸出できるようになるため、カナダの肉牛生産者にと って喜ばしいニュース」と歓迎するコメントを発表した。 一方、アンチダンピング提訴の原告であるR−CALFのレオ・マクダネル 会長は、ITCの決定について「極めて失望した」と述べるとともに、「決定 理由を精査して今後の方針を決めたい」としている。また、カナダ近隣の北部 生産州選出議員もITCの判断に批判的で、トム・ダッシェル上院議員(民主 党・サウスダコタ州)は、「肉牛市場が、生産コストを下回って輸入されるカ ナダ産生体牛により、被害を受けているのは明らかで、ITCの決定はおかし い。今後も生産者とともにこの問題に取り組んでいく」と語った。 今回のアンチダンピング調査は、DOCでの仮決定および最終決定に続いて、 ITCの最終決定をもって打ち切りとされるため、今後は、R−CALFが、 この問題を北米自由貿易協定(NAFTA)に基づく紛争処理パネルに提訴す るのかといった点に関心が移される。
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