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連邦政府が酪農改革案を発表(豪州)



【シドニー 野村 俊夫 9月30日発】  豪州連邦政府は、9月28日、総額18
億豪ドル(約1,260億円:1豪ドル= 70円)の酪農改革案を発表した。

  豪州では、加工原料乳の価格補てん制度、飲用向け生乳の価格支持制度が、それ
ぞれ連邦政府および各州政府によって実施されている。このうち、連邦の加工原料
乳制度は、来年6月末で廃止されることが既に決定されている。

  このため、業界の代表団体である豪州酪農乳業協議会(ADIC)は、これに併
せて各州の飲用乳制度も廃止し、すべての生乳取引を完全に自由化する一方、必然
的な乳価の低下によって生産者が被る損害を一括して補償するという包括的な酪農
改革案を提案していた。

  今回の連邦政府の発表は、これに応えるもので、酪農生産者への補償金を柱に、
業界案(総額12億5千万豪ドル(875億円))を上回る内容となっている。補
償額は、98/99年度の生産実績に、飲用向け1リットル当たり46.23セント
(32円)、加工向け同8.96(6円)セントを乗じて算出される。また、酪農廃
業者に対しては、1戸当たり最高4万5千ドル(約3百万円)を別途支払うことが
新たに盛り込まれた。

  補償金は非課税とはならなかったものの、一括払いから8年間の分割払いに変更され、
生産者の税負担が軽減された(借入れの形で一括払いにすることも可能とされている)。

  また、これらの補償金の財源は、小売段階で牛乳販売に賦課される課徴金(11セント
/リットル)によって賄われる。

  今回の発表で、酪農改革は大きく前進したが、先行き不透明な部分も多い。先般、実施
されたビクトリア(VIC)州の総選挙では、優勢とされた与党(連邦政府と同じく自由・
国民両党の連立)が惨敗を喫し、近々実施される補欠選挙の結果いかんでは政権交代も有り
得るという極めて不安定な政治情勢になった。

  同州政府は、これまで酪農改革を積極的に推進してきたが、今回は酪農地帯などの地方
区で大量の議席を失った。労働党を中心とする野党は、この結果を経済優先・地方切捨て
政策への批判と受け止めており、酪農改革についても見直しを行うべきと主張している。
事実、一部の生産者の間には、酪農改革の犠牲にされることへの不安と反発が広がりつつ
ある。

  今回の連邦政府の発表は、こうした中で、改革推進への固い意志を改めて示したもので
ある。ただし、当該案は、すべての酪農規制の撤廃を前提としているため、VIC州が
飲用乳制度の廃止を撤回すれば廃案とならざるを得ない。

  一方、加工原料乳制度は来年廃止されるが、これによって最大の損害を被るのはVIC州
の酪農である。したがって、同州は、連邦政府の補償政策を最も強く必要としていると言え
る。

  今後、VIC州および連邦政府が、この難局にいかに対処するか、目の離せない状況が続く
と思われる。


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