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【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 10月7日発】ブエノスアイレス市内で、 先月、アルゼンチン国立農牧技術院(INTA)主催の第1回食肉シンポジウムが 開催された。 「21世紀の食肉産業、アルゼンチンの競争力」と題する同シンポジウムでは、 食肉全般を対象とし、国内外の食肉市場動向と需給展望、生産力とその限界、輸出 力、品質と安全性、食肉処理加工と商品化のあり方など幅広い分野で識者の講演と、 引き続いて討議があった。 同シンポジウムでは、近年の食肉輸出量の低下を危ぐし、21世紀に向けて食肉 生産を振興させ、輸出市場を確保しなければチャンスは永久に失われるという問題 意識が提示された。国際競争に打ち勝つには顧客ニーズに応じた生産と商品化が必 要であり、アルゼンチンの取り組みや商品について一層国内外に宣伝する必要があ るという、従来思考からの脱皮がうたわれた。 第二次世界大戦中、本家ヨーロッパに対し「我々の小麦と牛肉を買うのか買わな いのか」とたんかを切り、戦後は日本に食糧援助を行ったアルゼンチン。 しかし、現代の国際競争の中で活路を見い出すには、アジア市場も射程に入れ、 顧客のニーズに応じたきめ細かい取り組みが必要であること、海外市場調査と宣伝 が大切であることを認識し始めたという意味で、今回のシンポジウムは大きな意義 があった。 牛肉生産から小売販売に至る分野は、牛乳・乳製品およびブロイラー産業に比べ 費用対効果が悪く、投資も不足しているという認識の下、以下の点が指摘された。 (生産分野) @ 生産規模の格差が大き過ぎ、基準となる最適コスト幅が存在しない(どんぶり 勘定的経営が支配的)。 A 牛肉(豚肉も同様)には付加価値がなく、一次産品の地位に甘んじている。 B 品質が一定していない。 (流通・販売分野) @ 枝肉流通が太宗を占め、部分肉流通が普及していないため流通コストが高い。 A 消費者に対し商品説明が十分でなく、お互いの情報交換が少ない。 B 食肉処理加工業者の再編整備が遅れており、処理加工のコストも高い。 C 業界内部の派閥争いなどで無駄なエネルギーと金を使っている。 D 衛生管理にコストがかかる(輸入向けと国内消費向けの衛生規則のダブルスタ ンダード)。 今回のシンポジウムの問題意識を、実務に携わる関係者がしっかりと持ち、先進 国の模倣と表面的なアピールで終わらせず、本気で取り組むかどうかで、今後、シ ンポジウムの真価が問われよう。
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