ALIC/WEEKLY


イギリスのミルクマーク、組織の分割計画を発表



【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 10月7日発】本年7月に、独占・合併に関す
る委員会からイギリス国内の生乳取引についての調査報告書が公表された。この調
査は、昨年1月に公正取引事務所が同委員会に対して要求したもので、その後9ヵ
月間にわたり調査が行われていた。本報告書によれば、イギリス最大の生乳販売協
同組合であるミルクマークは、市場シェア約50%という独占的地位を利用して差
別的な価格決定、生乳供給管理を行ってきた。この結果、生乳加工業者のコストが
増加し、その投資が減少し国際競争力も低下した。また、このことは大衆の利益に
反するものと考えられるとし、同組織の分割を勧告した。本報告を受け、貿易工業
省バイエル大臣はミルクマークの発展を抑制する中間改善措置を行うことと、生乳
販売体制の改革を模索することを決定していた。

 こうした動きに対応するため、9月21日、ミルクマークは、同組織を独立した
3組織に分割する計画を発表した。10月の臨時総会で会員の承認を得て3組織を
作り、12月から来年1月を目途に新組織による生乳販売を開始、3月を目途に新
体制に完全移行する計画である。

 構想では、ミルクマークは地域ごとに北部、中部、南部の3組織に分割される予
定である。各組織は競争原理が導入されるよう、方針決定、生乳販売・加工、経営
について独立した形で運営され、ジョイントベンチャーも行わない。新たな事業展
開としては、これまでミルクマークでは認められなかった、自らまたは顧客との共
同事業としての加工事業による生乳への付加価値の添加が可能となるとしている。
なお、現在はチーズ工場のみを保有している。

 今回のミルクマークによる組織改革の発表に関し、貿易工業大臣は、競争の強化
により、業界が若返るとともに、顧客への反応が敏感になり国際競争力もつくと歓
迎した。農業大臣、全国農業者組合(NFU)、乳業連合(DIF)も歓迎の意を
表した。

 ミルクマークの今後の課題としては、同計画のタイムスケジュールに沿った改革
が可能であるか、また加工事業への参入が可能であるかが挙げられる。前者につい
ては、まず10月の臨時総会、さらに3組織への適正な人員の配置が重要である。
後者については、規制もさることながら予算的な問題が大きいとされている。

 歴史的に見ると、ミルクマークは規制緩和政策の一環として、94年11月に国
内5つのミルクマーケティングボード(MMB)が廃止された際に、生乳販売を行
う農民出資の協同組合として設立された。当時MMBは、乳業メーカーであるデイ
リークレスト社を有していたが、MMBの解体とともに、生乳の集荷販売と加工分
野の切り離しが決定され、同社は民営化されることとなったという経緯がある。今
回の改革は一見、昔に返るようにも見えるが、その後乳業分野も合併などにより構
造改革、合理化が着実に進んでいる。独占禁止という大義名分とは言え、規模縮小
を余儀なくされることとなったミルクマークは、試練の時を迎えている。


元のページに戻る