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【シンガポール駐在員 外山 高士 10月7日発】タイ農業省は、輸出される食 品が遺伝子組み換え(GM)食品ではないことを保証するため、ラベル表示を行う ことを計画していると発表した。 タイでは、国内でGM作物を栽培することは法律で禁じられている。しかし、そ の作物を輸入することは認められているため、国内の強い需要により2年前から、 多くのGM作物が、加工食品の原料や家畜用飼料として輸入されている。なお、タ イ大豆穀物生産者協会では、同国における年間の大豆生産量は30万トン、輸入量 は80万トン程度であるとしており、そのうち25万トン程度がGM大豆とみてい る。 このような状況の中、農業省は、先月GM作物に関する公聴会を開催し、約25 0人の賛成派と反対派から意見を聞いた。今後の対策として、健康と環境に対する 安全性を第1に考え、@GM作物の栽培禁止の継続、A大豆、トウモロコシなどの 輸入原料におけるGMの表示、B食料医薬品局と連携して、大豆油などを用いた食 品の検査の実施、C輸出製品にGM作物を使用している場合には、その表示を行う こととした。 一方、この公聴会が開催される原因となった、タイ北部地域で採取された綿花の 中に、殺虫効果を持つGM綿花が含まれていたことについては、非政府組織をも含 めたメンバーによる調査団を現地に派遣することとした。 しかしながら、民間企業からは検査、認証制度の充実を要望する声が強くなって いる。先月ドイツ向けに小麦粉を輸出しようとした業者は、GM大豆を取り扱って いるとの理由から輸出を断られた。さらに、鶏肉の主要な輸出先であるイギリスの スーパーマーケットから、GM作物を飼料に使った鶏および水産物とその加工品に は、その旨を表示しなければならないとの通知を受け取った。これらの業者では、 早急な対応を求めており、輸出産業を中心にその要望は強まっている。 また、多くの食品サンプルが、検査のため科学技術環境省の研究所とカセサト大 学食品工学研究室の国内2ヵ所しかない検査施設に、持ち込まれ始めている。しか し、両検査施設とも、非GM作物の証明書を発行する認定は受けておらず、サンプ ルのDNA検査の結果を通知するのみにとどまっている。これらのことから、農業 省でも早期に公的検査認証機関の設置を計画するなど、対応に追われている。 しかし、これらの検査機関においても、加工食品や、魚缶詰に多く用いられてい る大豆油の検査を行うことができない状況にあるなど、ラベル表示の実施には多く の課題が残されているようである。
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