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【デンバー駐在員 樋口 英俊 10月8日発】バーモント州の米連邦地方裁判所 で9月29日、連邦ミルク・マーケティング・オーダー(FMMO)制度改革案の実 施について、30日間の暫定禁止命令が下された。このため、同改革案は、施行予 定日である10月1日を目前に控えて、実施が不可能な事態となった。 また、この命令で、改革案の施行と同時に廃止が予定されていた北東部酪農協定 (北東部諸州に対してFMMO制度に拘束されない高い乳価の設定を認めるもの) についても継続されることとなった。 裁判所での命令は、FMMO制度改革案の悪影響を懸念する北東部の4つの酪農 業協同組合(アグリマーク、デイリーリー、セント・アルバンスおよびアップステ イト・ファーム)の裁定申請(裁判官に判決などの行為をするよう要求すること) を受けたものである。これらの組合は、FMMO制度改革案の価格設定方法につい て、各地域の生産コストの違いを考慮しておらず、同制度の根拠法である1937 年農業マーケティング法などに違反していると主張しているほか、中西部のミネソ タおよびウィスコンシン地域を除き、生産者の所得を引き下げるものとしている。 同制度を所管する米農務省(USDA)農業マーケティング局(AMS)のメリ ガン局長は、9月30日に声明を発表し、今回の禁止命令について、制度の先行き を不透明にするもので、酪農家、乳業者および消費者のいずれにとっても好ましい ものではなく、失望したと述べた。 この案件についての本格的審理は、10月26日に開催が予定されているものの、 決着までにはさらに時間がかかると見込まれることから、今年中の施行を疑問視す る見方もある。 なお、同様の訴訟は、ワシントンDC、テキサス州でも行われているが、今回の ような命令には至っていない。 一方、議会においても、FMMO制度改革案修正の試みが精力的に進められてい る。6月30日に下院農業委員会を通過し、最有力視されていた法案(HR140 2)は9月22日、下院において賛成285票、反対140票で可決された。この 法案には、飲用牛乳(クラスT)の算定につき、現行のクラスT差額と変わらない オプション1Aを採用することや、チーズ向け(クラスV)価格の調整として、チ ーズ製造経費見合額を1ポンド当たり14.7セント(37円/kg)へ引き下げ ることなどの修正案が含まれている。 同法案については、上院での動きに焦点が移されるが、FMMO制度改革案を支 持する中西部選出議員などの同法案への反対行動も予想されている。また、上院で 可決されたとしても、大統領拒否権の発動も見込まれるなど、先行きは混とんとし ている。 このように訴訟問題も含めて、不透明な状況の続く中、一体どのような結果に落 ち着くのか、FMMO制度改革の動向からは、今後もしばらく目が離せない。
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