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EUの拡大へ向けた動きについて



【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 10月21日発】EU委員会は、13日に公表
したEU加盟候補国の状況報告書において、加盟申請が出されている6ヵ国(ブル
ガリア、ラトビア、リトアニア、マルタ、ルーマニア、スロバキア)について、一
部条件付きながら、2000年に加盟交渉を開始すべきと提言した。この提言は、
12月に開催されるEU理事会で討議される予定である。

 提言の背景としては、コソボ紛争を契機としたバルカン危機により、ヨーロッパ
の統一がその平和、繁栄へ不可欠であることが明確となり、EU拡大に弾みがつい
たことが挙げられている。

 同委員会は、政治的条件(民主主義、法律規則、人権、少数民族の尊重・保護)
を満たす加盟申請国であって、経済条件(市場経済を有し、EU内の競争に対応で
きること)を満たすための必要な措置をとる準備ができていると考えられる上記す
べての国との交渉を開始すべきと提言した。ただし、ブルガリアについては安全性
に問題のある特定の原子力発電所の閉鎖計画に関する決定、ルーマニアについては
児童福祉施設の財政措置およびその機構改革の確約を、それぞれ99年末までに取
り付けることおよび経済状況の改善を交渉開始の条件とした。

 現在の経済条件を交渉中の国を含んだ国別に見ると、キプロス、マルタは条件を
満たしており、ハンガリー、ポーランドがこれに続くとしている。また、畜産分野
に関しては、食肉加工施設の衛生改善、獣医検疫制度の改善などの必要性が指摘さ
れた。

 交渉は候補国の状況に応じ、その対応に変化を持たせ、それぞれの国の加盟に向
けた前進を容易ににすべきとした。加盟移行期間についても言及し、早急に整備す
べき単一市場分野と、より時間のかかる財政負担を伴う分野(環境、エネルギー、
インフラ整備等)等を区分すべきとした。

 加盟の目標期日に関しては、EU自身も、すべての条件を満たす候補国の加盟受
け入れに向けた準備(財政、機構、交渉終結)を2002年に完了させるべきとし
た。

 そのほか、加盟の希望を持っているトルコについては、加盟候補国とは位置付け
られるが、交渉開始には政治的条件にかなうことが必要としている。

 98年3月から、6ヵ国(ポーランド、チェコ、ハンガリー、エストニア、スロ
ベニア、キプロス)との加盟交渉が続けられており、今回の提言が実現されると、
現在EUと接している東部地域との統合が総合的に推進されることとなる。

 なお、これまでのEU加盟国の推移は次の通りである。

58年:欧州経済共同体(EEC)の発足、
        フランス、西ドイツ、オランダ、
        イタリア、ベルギー、ルクセンブ
        ルク、計6ヵ国
73年:イギリス、アイルランド、デンマ
        ーク、計9ヵ国
81年:ギリシャ、計10ヵ国
86年:スペイン、ポルトガル、計12ヵ
        国
93年:EEC→欧州共同体(EC)と改
        称→EUの設立、同12ヵ国
95年:オーストリア、フィンランド、ス
        ウェーデン、計15ヵ国


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