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【シンガポール駐在員 外山 高士 9月9日発】フィリピン最大の養豚農家組合 である全国養豚農家協会(NFHF)は、政府に対して、豚肉の輸入制度について、 ミニマムアクセス(MAV)枠の削減と関税率の引き上げを行うよう申し入れを行 った。 同国は、ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意に基づき、95年からMAV 枠を設けて豚肉の輸入を行っている。これに基づく豚肉の輸入量は、95年のMA V枠3万2,520トンを2004年までに5万4,210トンに、MAV枠内関税 率は30%のままに据え置くものの、枠外関税率は、95年の100%を2004 年までに40%に引き下げることとなっている。 しかしながら、MAV枠内の輸入許可証の多くが、養豚業者に交付されているこ となどから実際にはあまり輸入されず、同国の豚肉輸入量は、MAVと比較して大 幅に低い水準となっていた(96年MAV:4万9,985トン、輸入実績:約6, 000トン)。このため、同国政府が事実上、輸入を制限しているのではないかと して、97年4月末から、世界貿易機関(WTO)協定に基づく22条協議が米国 との2国間で行われる事態となり、98年にフィリピン側が、期限までに輸入され なかった割当数量の再分配を行うなど、制度の運用を改善することで決着していた。 同協会では、MAV枠の削減を優先課題として挙げているが、94年の決定時に、 本来3,200トンにするべきものを3万2,000トンにしたことに間違いがあると している。これは、同協会が94年における年間国内消費量の試算を10万7,00 0トンとしており、MAV枠はその3%である約3,200トンであるべきで、その 10倍にも及ぶ枠の設定は、政府内での誤解によるものであり、このことが養豚業 界に危機的な状況をもたらした原因であると同協会では述べている。 また、関税率については、現在枠外の関税率60%を80%以上に引き上げるこ とを求めている。同協会では、中長期的に外国と競争していくためには、最低でも 現在の生産コストの水準を外国と同レベルにして、将来の対応に備えておくべきで あるとしており、そのために必要な関税水準を80%としている。 同協会では、これらの要求を11月末にシアトルで開催される予定のWTO閣僚 会議で提案し、同国のUR合意内容についての改めて交渉することを、WTOメン バー各国と行うよう求めている。同国政府では、MAV枠の設定の間違いについて、 一部認めるような発言があるなど、同協会の要求を認める動きが見られているよう であるが、今後どのような対応を示すのか、その動向が注目されている。
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