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イギリス、追加農家対策を発表



【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 9月23日発】イギリスでは、最近、羊肉の市
況低迷や牛海綿状脳症(BSE)発生に伴う牛肉供給制限などから、畜産農家の経
営悪化が深刻化している。ブラウン農相は、9月20日、追加農家対策を発表した。

 同農相は、イギリス政府の農家政策の目的は、生産に基づく補助金への依存の減
少、長期的かつ実質的な構造改革、共通農業政策(CAP)に歪曲されることのな
い真の市場開拓であるとした上で、次のような政策を総合的に推進するとしている。

 CAP改革については、この秋に、関係者の意見を聞いた後、アジェンダ200
0地方開発規則に関する決定を発表する予定である。

 昨年秋には、主な政策を発表したが、畜産農家の状況は依然厳しく、例外的に特
別対策を考慮する必要がある。

 17日のEU羊肉管理委員会で認められた子羊肉(ラム)民間在庫補助(イギリ
ス枠2,350トン)を実施する。10月から12月までに14万頭の子羊が市場
から隔離されれば、生産者の収入増加が期待できる。なお、EU全体の対象子羊肉
は2,700トンで、イギリスのほかアイルランド250トン、フィンランド100
トンの子羊肉民間在庫補助が認められた。3ヵ月以上7ヵ月までの保管に関し、3
ヵ月の保管について1トン当たり1,400ユーロ(15万4千円:1ユーロ=約
110円)、それ以降は1日・1トン当たり1.45ユーロ(約160円)が加算
され補助される。

 丘陵地畜産補償手当については、昨年同様6000万ポンド(108億円:1ポ
ンド=約180円)の増額を行う。

 BSEに関する監視費用、パスポート(個体識別)費用(1頭当たり7ポンド
(1,260円)を予定)についての農家負担を少なくとも2年間、2002年3
月まで延期する。最近の沈滞した市場情勢から見て、これらの費用負担は国民負担
とするのが妥当である。

 と畜場規則、総合実施管理システム(IACS)、介入買い入れに関して効率化
を図り、不要な規制を廃止するための作業部会を設置する。

 処理量の少ないと畜場の監視義務を緩和するなど食肉衛生サービスの効率化を図
る。

 加工用の骨付き牛肉の販売解禁を検討する。イングランドの政府医療専門家から
大臣にあてた科学的な「骨付き牛肉に関するアドバイス」を近日中に刊行予定であ
る。同専門家は小売り肉の解禁も可能であるが、加工用肉に限定するのが望ましい
としている。ただし、骨付き牛肉の解禁にはスコットランド、ウェールズの専門家
が時期尚早としていることから実施に多少の遅れが出ることは避けられない。

 消費者には高品質な食料を競争力のある価格で提供する必要がある。このため、
食料の生産から流通までのチェーン機能(マーケティング)の強化を検討する作業
部会を設置する。

 ポンド高に対しては、補償的対策をEU委員会に要求し、認可されている。

 以上の大臣の発表に対する農民の反応は、一部の施策は歓迎できるが、最近の市
況低迷には十分でないと厳しいようである。


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