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牛肉の輸入先で政府と業者が対立(インドネシア)



【シンガポール駐在員 外山 高士 9月22日発】インドネシア政府は、現在、
輸入牛肉の多くが豪州産となっているが、今般、新たな輸入先として、アイルラン
ド、インド、アルゼンチンの3国を指定して、これらの国に取り替えるよう呼びか
けを行った。これに対して輸入業者協会では、政府の提案は時期尚早で、受け入れ
られないとして、政府と対立している。

 インドネシアでは、97年まで経済発展に伴い牛肉需要量が急速に増加していた。
このため、牛肉の増産に力を入れているものの、需要が急増したことから生産が追
いつかず、7万5千トンから9万トン程度の牛肉と、国内で肥育するための素牛を
20万頭から40万頭輸入していた。なお、その約8割は豪州からのものであった。

 しかしながら、98年に始まった通貨危機と政治不安から、その輸入が急速に減
少しており、政府の発表では、98年の肥育素牛の輸入量は約4万頭に激減してい
る。このため、多くの肥育農家では、増体重の十分でないものや、雌牛までも肉牛
として売り払うなど、政府が目標としている2005年までに、牛肉を自給できる
生産体制の確立が難しい状況となっている。

 このような事態を解決するため、政府は少しでも安い牛肉を輸入することとし、
比較的価格の安いアイルランド、インド、アルゼンチンを選択し、輸入先をこれら
の国に取り替えるよう呼びかける今回の措置となった。

 しかし、輸入業者協会では、新たな輸入先を開発することには賛成しているもの
の、これまでの関係から、豪州からの輸入をやめることには反対している。また、
政府の提案しているアイルランドについては牛海綿状脳症(BSE)、インドとア
ルゼンチンについては口蹄疫の恐れがあるなど病気の問題があることと、これらの
国とは取り引きの実績がなく、流通経路の開拓に時間がかかることから、輸入先と
して適当ではないとしている。さらに、インドネシアが輸入先を他の国にしようと
しているとの話が、豪州においてインドネシア向け牛肉輸出のボイコット運動に発
展するかもしれないという情報が広がっている。これに対し、同協会では豪州から
の輸入に支障が生じないよう政府に申し入れをするなど、豪州からの輸入に期待を
している。一方、政府では、インドネシアの牛肉輸入量は少なく、BSEの発生率
から見るとアイルランドはほとんど問題なく、インドとアルゼンチンの口蹄疫も、
生産地域を限定することで問題ないとしている。

 現在、インドネシアでは、最近の東ティモール政情不安から、同国の通貨ルピア
が下落し始めており、この影響による輸入価格の上昇から、少しでも安い牛肉を輸
入せざるを得ない状況となっており、今後の政府の動向が注目されている。


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