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EUが新たなBSE検査計画を採択



【ブラッセル駐在員 井田 俊二 4月6日発】EU常設獣医委員会(SVC)は、
4月5日、牛海綿状脳症(BSE)対策として、新たなBSE検査計画を採択した。
この結果、すべての加盟国が、BSEに感染している可能性のある牛(2歳以上)
のうち10%以上のと体に対し、BSE検査が義務付けられることとなる。EUで
は、現在でも複数の加盟国でBSEの発生が確認されているが、すべての加盟国を
対象としてBSE検査を徹底することにより、域内におけるBSEの感染頭数およ
び感染パターンをより的確に把握することを目的としている。この検査計画は、2
001年1月1日から実施される。

 EUでは、約4千1百万頭の牛(2歳以上)が飼養されている。このうち、BS
E感染の可能性がある牛(特に農家において原因不明で死亡した牛、病気で緊急に
と畜された牛、行動面または神経学的に兆候の見られる牛など)が監視の対象とさ
れ、EU全体で約40万頭に上るとみられる。今回の検査計画では、BSE感染の
可能性のある牛のうち6万5千頭(約16%)を対象として、BSE検査を実施す
ることとなった。検査は、スイス、フランスおよびアイルランドで開発され、99
年7月にEUで有効と認められた3つの方法のいずれかで実施される。なお、検査
結果は、検査後4〜24時間で判明し、現行の1件当たり検査費用は30〜40ユ
ーロ(約3千〜4千円:1ユーロ=101円)を要する。EU委員会では、検査費
用を加盟国と相互負担すると見込んでいるが、実際の検査費用総額が未定であるこ
とから費用負担の配分は決まっていない。

 一方、今回のEU決定に先立って、フランスでは3月18日、BSE検査計画を
公表した。EUの検査基準より厳しい4万頭の牛を検査対象とし、2000年5月
から実施することとしている。牛と体に対するBSE検査は、スイスで先行して実
施され、BSE対策に大きな成果を挙げている。このため、フランスおよびEUの
検査計画は、スイスをモデルとして作られている。

 EUでは、今年になっても複数の加盟国でBSEが確認されており(イギリス3
9,ベルギー1、デンマーク1、フランス8、アイルランド24、ポルトガル13
の計86頭)、イギリス以外の加盟国で発生件数が増加する傾向にある。一方、牛
と体に対するBSE検査は、イギリスなどで義務化されているが、すべての加盟国
でBSE感染を的確に把握する体制が整備されている状況にない。このためEU委
員会のバーン委員(公衆衛生/消費者保護担当)は、今後BSE対策を強化してい
く意向を表明していた。

 今後は、この計画に基づき検査を徹底した結果、これまで以上にBSE感染牛の
存在が明らかになり、BSE対策強化の必要性が再認識されることが予想される。
EU委員会は、こうした結果を踏まえ、食用牛肉に対する特定危険部位(SRM)
除去の徹底等BSE対策を強化・推進していくものとみられる。


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