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【シドニー駐在員 幸田 太 4月6日発】酪農乳業制度改革(生乳生産販売の完 全自由化と酪農家所得補償)を実現させるべく、豪州連邦政府が国会に上程してい た酪農改革法案は、3月16日、酪農廃業者への廃業補償を含め総額17億4千万 豪ドル(約1,160億円:1豪ドル=67円)の補償に4千5百万豪ドル(約3 0億1千5百万円)の追加補償を加え、上院および下院を通過し成立となった。こ れにより、7月からの酪農改革の実施が正式に決定され、今後は、酪農生産者など に対する具体的な補償方法の検討作業が進められる。 法案成立の背景には、3月3日に開催された豪州各州政府の農相会議において、 飲用乳制度の撤廃が基本的に合意されたことが大きく影響したとされている。 連邦政府は、この基本合意を受け、法案成立に向けての作業を進めていたが、野 党から、飲用乳課徴金を消費者のみに負担させるのは不公平だとし、政府財源の支 出による補償の上乗せを強く求められた。また、各州政府からも、新たな補償制度 を求める声が強く挙がっていた。このため、連邦政府は、当初、8年間とされた飲 用乳課徴金の賦課期間を延長し、新たな財源をねん出する追加修正を行った。 追加された4千5百万豪ドルの補償は、法案成立で影響を受ける酪農地域に対す る補助とし、その運営管理は雇用・職場関係・中小企業省(DEWRSB)によっ て行われる。 連邦政府は、具体的な補償金支給に向けて、3月29日、補償金支給の準備を行 う援助金査定委員会(DAP)を発足させ、5名の委員を任命した。委員長には、 農業経済分野の法律専門家であるワレン氏を指名し、同氏の豊富な経験と厳正な補 償金受給資格の決定を期待している。 委員長となるワレン氏は「法案は連邦議会を通過した。政府が必要としているの は迅速に酪農生産者に対し補償の実施を行うことだ」とのコメントを発表し、7月 からの改革実施に向け具体的作業の早期着手を強調した。 DAPの活動内容は、酪農改革が行われた場合の酪農産業に対する補償を実施す るに当たり、その過程で生じる問題をできるだけ円滑に処理し、生産者の期待に応 える補償金受給資格の迅速な決定を行うこととなっている。 なお、最終的には、酪農調整機関(DAA)の設立を待って同機関に作業を移行 する予定としている。DAAは、DAPの活動を引き継ぎ、補償金受給資格の審査 や、実際の賦課金の徴収、補償金支払いを管理する。 補償実施の前提とされている各州政府の飲用乳制度の撤廃については、州議会で の議決はまだ行われていない。しかしながら、基本合意が成立していることから、 当該法案の成立により、事実上、決議されたことと等しく、豪州酪農改革の姿が見 え始めた。
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