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米国産食肉の対中輸出開始と中国のWTO加盟問題



【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 4月6日発】バシェフスキー米通商代表部
(USTR)代表とグリックマン米農務長官は、米中2国間合意を受けて、中国政
府が米国産の食肉(家きん肉を含む。)、かんきつ類および小麦等について公布し
た新たな輸入規則に基づき、4月2日に、米国産食肉が、初めて直接、中国に輸出
されたと述べた。

  今回の第1便は、米農務省(USDA)食品安全検査局(FSIS)が承認した
処理施設からの食肉産品についても、輸入を認めるという、中国側の検疫・衛生条
件の見直しを受けたものである。それまでは、中国の検疫担当官が検査し、承認し
た施設で処理された食肉産品の輸入しか認められていなかったため、米国産食肉の
大半は、香港を経由して中国に輸入されていたという。

  こうした中国側の対応について、バシェフスキー、グリックマン両氏は,「中国
への輸出機会の増大に資するものである」として、前向きの評価をしつつも、「議
会が、中国に対する恒久的な通常貿易関係(NTR:最恵国待遇(MFN)と同義)
の供与を認めない限り、(中国の市場開放が)完全なものとは言えない」(バシェ
フスキー)と述べるなど、中国の世界貿易機関(WTO)加盟の必要性を強調した。

  また、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)、全国豚肉生産者協議会(NPP
C)、米国食肉輸出連合会(USMEF)などの食肉関係団体も一様に、政府と同
様の見解を表明しており、今回の中国による2国間合意の実施は、「恒久的なNT
Rの議会承認を後押しするもの」との期待を寄せている。

  米中政府間の中国WTO加盟交渉は、昨年11月に最終合意がなされたが、その
中の、牛肉の現行税率45%を2004年には12%に、豚肉も同様に20%から
14%に引き下げるといった、中国による合意内容の完全履行は、中国がWTOに
加盟して初めて確保されるものである。具体的には、3月8日にクリントン大統領
が議会に提出した対中NTR恒久化法案が可決されなければ、米国が中国のWTO
加盟を正式に認めたということにはならず、米国内の関係団体の最終目標もそこに
あると言える。

  しかし、11月に予定されている大統領と連邦議会の選挙が、クリントン政権と
議会とのねじれた構図を一層複雑化させ、今後の見通しを不透明なものにしている。

  法案の通過が見込まれている上院と異なり、今回の選挙で全議席が改選される下
院においては、共和党議員のみならず、大統領と同じ民主党議員の中でも、中国の
人権、労働、環境問題を非難する支持団体に配慮し、法案に反対または採決を先延
ばしすべきとの意向を明らかにしている議員は少なくない。

  また、5月29日のメモリアルデーをはさむ10日間の休会期間前までに採決さ
れないと、その後の選挙戦の争点になりかねないため、結果的に、採決は来年まで
ずれ込むのではないかという声もあるなど、法案の早期可決に向け奔走するクリン
トン政権にとっては、楽観視できない状況にある。


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