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【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 4月20日】現在、アルゼンチンの食肉 処理加工業者のうち牛肉輸出業者は農畜産品衛生事業団(セナサ)の決議4238 /68で定められている基本的な衛生、品質管理条件のほか、各輸入国が個別に課 す高度な衛生、品質管理条件を満たすことが要求されている。例えばEUへの輸出 の場合は、原産地の表示(アルゼンチンでは家畜移動許可書(DTA)で生産者を 特定できる)、生産者のセナサへの登録、特定の合成ホルモンの残留検査などが課 されている。米国向けの場合は、危害分析重要管理点システム(HACCP)の導 入が要求される。EU、米国への輸出条件の共通事項は枝肉の熟成条件(熟成温度、 時間、pH)、サルモネラ、大腸菌、リステリアなどのバクテリア検査、抗菌剤な どの化学物質の残留検査などである。 一方、国内市場(牛肉生産の約85%を占める)にだけ供給する食肉処理加工業 者は同決議の品質、衛生管理条件を満たし、セナサの認定工場であることを示す認 定番号を表示すれば実需者に販売できる。 輸出業者の施設で処理される国内向けの牛肉は輸出向けと同じ衛生管理の下で処 理されるので、衛生管理の違いは最終的に輸出業者のコストとして跳ね返り、従来 から、輸出業者の、まじめな人間が損をするという不満が絶えないでいる。 セナサは、HACCP導入と製品の表示内容の2点が輸出業者と国内向けの業者 の大きな差であるとし、将来この差をなくすことを意図している。具体的には以下 の取り組みを計画している。@国内向けの食肉処理加工業者に対するHACCPの 適応、そのために同決議にHACCPを追加する。A国内向けの表示を輸出向けと 同様にし、原産地、賞味期限、成分表示など消費者の知りたい情報を盛り込む。B 消費者自身の意識改革も必要であることから、消費者の代表をセナサの衛生、品質 関係の会議のメンバーにする。C国内消費の3割を占める食肉専門店、7割を占め るスーパーマーケットに対してはまだ枝肉搬入が一般的だが、今後、徐々に部分肉 の搬入を増やし表示を工夫するなどである。これらコンセプトを総合しトータルク オリティーを達成すれば、輸出向け、国内向けの区別はなくなり、しかも、輸入国 の個々の要請に従わなくてもアルゼンチンの食肉といえばどの国へも文句無しに輸 出できるというのがセナサの考えだ。 将来的にトータルクオリティーが達成されれば、アルゼンチン産牛肉は輸入国で の評価も高まると考えられるが、国内製品の衛生、品質面に対しても消費者の関心 が高まり国民の期待がかけられ、衛生当局はそれにこたえなくてはならないことだ ろう。
お知らせ:来週は休刊とさせていただきます。次号は5月10日発行です。 |
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