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変ぼうするシンガポールの豚肉流通


【シンガポール駐在員 外山 高士 7月27日発】シンガポール政府の公表した
99年の貿易統計によると、これまで同国における豚肉の供給源として、9割以上の
シェアを占めていたマレーシアからの生体豚の輸入頭数が、前年比79.9%減の20万
4千頭と大幅な減少となっている。これは、98年10月からマレーシアで発生してい
たウイルス性脳炎を理由に、シンガポール政府が99年3月にマレーシアからの生体
豚の輸入を禁止したことによるものである。

 シンガポールでは、中国系住民が全人口の約8割を占めているため、豚肉が多く
消費されるが、国内での養豚は環境問題などから90年に禁止されており、その供給
をすべて輸入に頼っている。なお、マレーシアからの輸入禁止後は、生体豚は、イ
ンドネシアの1農場のみからの輸入しか認められていない。シンガポール統計局の
公表した、国内2ヵ所のと畜場における99年の豚と畜頭数が46万5千頭であること
から、インドネシアからの輸入頭数は、約26万1千頭と推計され、前年比9.2%増
とかなりの増加となっている。しかし、と畜頭数は前年比63%減となっており、ウ
イルス性脳炎がシンガポールの豚肉流通に大きな影響を与えていることを示してい
る。

 一方、これに代わり豚肉の供給源として急増しているのが冷蔵・冷凍豚肉である。
冷蔵豚肉は、98年にはわずか4トンしかなかった輸入量が、99年には74倍の296ト
ンまで急増している。また、冷凍豚肉も、98年の5,400トンが99年には2.5倍の1万
3,600トンに急増している。主な輸入相手国も、98年は冷凍枝肉が中国、冷凍部分
肉がスウェーデンとなっていたが、99年には主にデンマーク、オランダ、フランス
といったEU諸国から輸入されるという状況に変化している。なお、冷蔵豚肉の輸
入は、いずれの年も、全量豪州からとなっている。

 同国政府は、99年11月から豚肉小売店に冷蔵陳列棚の設置を義務付け、政府主導
で豚肉流通形態の改善に乗り出している。しかし、陳列棚の導入経費など施設整備
にかかる経費が、すべて小売店の負担となっていることなどから、豚肉価格は上昇
の傾向にある。同国政府の公表した99年の豚肉小売価格は、前年比20%高の1s当
たり9.29シンガポールドル(約585円:1シンガポールドル=約63円)で、ほぼ前
年並みで推移している牛肉や鶏肉の価格と比べても、大幅な上昇となっている。同
国内では、豚肉から鶏肉へ需要が移動するなど、価格の上昇に伴う豚肉の消費停滞
が懸念されており、今後の需給動向が注目されている。


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