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米FDA、鶏卵への放射線照射を認可
【ワシントン駐在員 樋口 英俊 7月27日発】米保健社会福祉省食品医薬品局 (FDA)は7月20日、サルモネラ菌を抑制するため、鶏卵(殻付き)への放射線の 照射を認可した。FDAによれば、今回認可された放射線量は、3キログレイまで とされており、上限近くになると卵黄の色と卵の粘性に影響を及ぼすこともある旨 報告されているが、安全性自体には問題がないとしている。 FDAは放射線照射の効果について、サルモネラ菌の完全な消滅は保証できない ものの、これらを大幅に減らすことが可能としている。なお、照射された鶏卵には、 放射線照射を行った食品であることを表示しなければならない。 米国では、毎年3百万人以上がサルモネラ菌で発病し、医療費や生産性の低下で 多大な損失を被っているとされ、サルモネラ菌対策が大きな問題となっている。ク リントン大統領の肝いりで98年8月に発足した食品安全性に関する協議会では、鶏 卵の安全性確保がサルモネラ菌対策の優先課題の1つとして指摘され、99年12月に は、鶏卵関連のサルモネラ菌による発病件数を2005年までに半減し、2010年にはゼ ロとすることを目標としたアクションプランが発表された。 このプランは、鶏卵の生産現場から消費に至る各過程における衛生状況の改善に 必要なシステムの構築、サルモネラ菌に起因する病気の発生状況の監視、研究、教 育活動などを網羅した包括的な取り組みを可能にするもので、これまで数回の公開 会議を開催して意見を聴取するなど、検討が続けられている。また、7月末には、 新たな安全基準に関する規則の提案などに向けて、現在の試案を検討する公開会議 も予定されている。 米国での放射線照射の取り組みは、1963年のカビの抑制を目的とした小麦粉に始 まり、翌年にはジャガイモ(発芽防止)、86年には果実、野菜、ハーブおよび香辛 料(昆虫・微生物の除去、シェルフライフの長期化など)が承認されている。畜産 物では86年に旋毛虫の不活性化を目的として豚肉が承認されたほか、92年には家き ん肉、2000年2月には食肉全般に対して、食中毒の原因となる病原体を抑制するため に放射線照射が認められた。 放射線照射食品の普及に当たっては、消費者の反応が重要なポイントとなる。フ ロリダ州では、6月中旬に放射線を照射した牛ひき肉が販売されたが、食品の安全 性を強調する店内でのキャンペーンや地元での広告なども奏功して、消費者からの 反応は良好であったと報じられている。ある店舗では、この牛ひき肉を求めて約60 マイル(96km)離れた場所から来店する顧客もいたとのことで、消費者の食品安全 性への関心の高さを示している。放射線照射は食品安全性の向上に貢献することは 間違いないが、鶏卵についてもフロリダ州の牛ひき肉と同様の反応を得られるのか、 興味深いところである。
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