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豪州・NZ、GM食品の表示義務化を決定
【シドニー駐在員 野村 俊夫 8月3日発】豪州とニュージーランド(NZ)の 連邦・各州の保健担当大臣(10名)で構成する、豪・NZ食品基準協議会(ANZ FSC)は、7月28日、NZのウェリントンで会合を開き、原則としてすべての遺 伝子組み換え食品(GM)に表示義務を課すことを決定した。施行は正式に公布さ れてから1年後となるが、導入されれば世界で最も厳しい表示規則になると注目さ れている。 今回、表示義務を課すことが決定されたのは、@最終製品段階でGMによる新規 のDNAまたはタンパク質(新規DNAなど)が存在する食品および食品材料、A 元の特性が変えられた食品および食品材料の2項目。 一方、表示義務の対象外とされたのは、@高度に精製されて新規DNAなどが除 去された食品、A最終製品段階で新規DNAなどが存在しない食品加工補助物質お よび食品添加物、B最終製品段階で含有濃度が0.1%以下の風味添加物、C販売時 点で調理された食品(レストラン料理など)。 また、GM作物原料が「意図的でなく」1%未満混入した食品についても表示義 務の対象外とされた。 ANZFSCは、既に昨年8月、食品の表示義務について規定している現行規則 を、すべてのGM食品に拡大して適用することに合意している。 しかし、この合意は具体的な表示義務があいまいであり、また、豪州連邦政府の ハワード首相が両国の食品産業に及ぼす経済的な影響を考慮すべきと主張したこと もあって、今年3月、専門家による調査報告書(表示義務化に係る食品産業のコス トを試算)が作成され、さらなる検討が進められていた。 豪州連邦政府は、当該報告書の答申を踏まえ、GM作物原料の含有割合が1%未 満の食品については表示義務の対象外とするという修正案を発表し、ANZFSC 各委員に賛同を求めた。 今回の決定はこの問題に決着を付けたものであり、ANZFSCの原案が7対3 の支持多数で承認され、豪州連邦政府の修正案は否決される結果となった。 この決定を受けて、豪州保健衛生省のタムブリング次官(上院議員)は、ANZ FSC各委員が多くの点で豪州連邦政府の修正案に歩み寄りを見せたことを評価し つつ、食品産業が高度精製食品や食品添加物についても新規DNAなどの存在有無 の確認を求められることになったのは残念だとコメントを発表した。 一方、豪州連邦政府は、今回の決定が世界貿易機関(WTO)の国際ルールに抵 触する恐れがあるとして、その面からも検討を開始した。 現在、豪州連邦議会では、GM作物の安全性監視体制を強めるための法案が審議 されており、今回の食品表示問題と併せて国民の関心を集めている。
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