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米大統領候補の農業政策
【ワシントン駐在員 樋口 英俊 8月17日発】21世紀初の米大統領を選出する 今回の選挙戦で、共和党のブッシュ・テキサス州知事に続き、16日には民主党の全 国党大会でゴア副大統領が同党の大統領候補として正式に指名された。 ブッシュ・テキサス州知事は、共和党の主導で制定された96年農業法について、 長期間行われてきた政府による供給管理を廃止し、市場の需要に応じて生産者が作 付けを決定できるようにしたものであり、こうした努力を支持するとしている。一 方、市場志向の政策を展開する上で、現在のような価格低迷の局面に対処するには、 より強力なセーフティーネットを用意する必要性があるとして、保険の対象農産物 の拡大、保険の種類の多様化、料率の引き下げなどのほか、生産者が純所得のうち、 一定割合を留保し、所得減少時に引き出しを可能とする農家および牧場リスク管理 (FARRM)口座の導入も提唱している。 これに対して、ゴア副大統領は、96年農業法について、過去数年において多額の 緊急支援策を必要とするなど、深刻な欠陥を有しており、変更が必要と主張する。 ゴア副大統領もブッシュ州知事と同様に、セーフティーネットの強化が必要として、 保険制度の充実を訴えているが、このほかに、所得の変動幅に応じた補助の実施や 短期融資制度におけるローンレートの上限撤廃も提言している。さらに、米農務省 (USDA)による生産者への直接融資や債務保証の拡充も支持している。 市場志向的な政策継続のカギとなる農産物貿易について、ブッシュ州知事は自由 貿易の実現に向けて、関税や輸出補助金などの障壁を除去していくことを約束して いる。また、このために必要なファストトラック権限を失効させた現政権を批判す るとともに、同権限の復活に尽力するとしている。なお、食料を一方的貿易制裁の 対象品目とする問題については、その実効性から除外すべきとの見解を示している。 ゴア副大統領も、輸出拡大の強化を強調している点や食料の一方的貿易制裁からの 除外では同様の政策を掲げている。このほかにも、バイオテクノロジーなどの先端 技術の研究開発、畜産部門での寡占化などに伴う非競争的慣行の防止など、共通す る点はあるものの、ゴア副大統領は環境保護派らしく、農地や自然資源の保全を図 るための奨励事業の提案を、一方、ブッシュ州知事は一連の減税提案の一環として、 特に生産者から要望の強い相続税の廃止を盛り込むなど、それぞれの特徴的な政策 も含まれている。 今のところ農業政策は、主要な争点となっておらず、具体性には欠けるものの、 正式指名後選挙戦が本格化し、主要農業州でのキャンペーンも増えるのに応じて、 それぞれの方針がより明確になっていくとの見方もあり、今後の動きに注目したい。
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