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豪州・NZ食品基準の全面改訂を決定


【シドニー駐在員  野村 俊夫 11月30日発】豪州・ニュージーランド(NZ)
の連邦・各州の食品衛生担当閣僚で構成する食品基準会議(ANZFSC)は11月
24日、両国の食品基準の全面改訂を決定した。これは、旧来の基準では近年の多様
な食品群に対応することが困難となったため、新たな食品の定義、基準や表示義務
を定めたものであり、消費者ニーズの多様化も考慮した世界でも先端的な食品基準
になると注目されている。

 豪州では、91年に各州独自の食品基準(Food Standard Code)を全国で統一する
作業が開始され、94年にはこれが食品基準の全面改訂へと発展し(NZは96年に参
加)、今回の決定につながっている。

 新たな食品安全基準は3つのパートから構成されており、パート1は食品安全に
付随する基本的な事項(表示、添加物、遺伝子組み換え、各種微生物、有害物質、
新分野食品、放射線照射など)、パート2は食品の定義分類(穀物、食肉、水産物、
酒類、砂糖など)、パート3は製造流通基準(施設、取扱方法など)となっている。

 このうち、特に議論の的となったのは表示問題であり、その第1は食品栄養表示
の義務化であった。これは、従来、一部の機能性食品のみで行われていたが、今回
改訂により、原則としてすべての食品への表示が義務化された。従って、(カロリ
ー)、たんぱく質、脂肪分、炭水化物、塩分などの含有量が、キロジュール、グラ
ムなどの単位で明確に表示されることになる。

 第2に、主要な原材料の構成割合の表示も義務化される。例えば、豪州名物のミ
ートパイなどは、主要原料であるミートやパイ生地が実際に全体の何パーセントを
占めているか、明確に数値で表示されることになる。

 第3に、アレルギーを誘発する可能性のある原材料(ナッツ、ミルク、卵、大豆、
水産物など)が含まれている場合には、その旨の表示をして警告することも義務化
される。

 製造年月日や食品添加物などは従来通り表示義務の対象となるが、表示文字の大
きさや色調に至るまで詳細な規制が導入される。一方、包装面積が100平方センチメ
ートル未満の小パック(例:チューインガム)、食肉・魚・果物・野菜などの単体
製品パック、酒類、茶・コーヒーなどは、表示義務が免除される。

 改訂案を作成した豪州・NZ食品基準局(ANZFA)は、新食品基準によって
消費者の安全が守られるのみならず、食品メーカーも消費者ニーズに応じた多様な
製品開発ができるとしている。

 例えば、従来の基準ではアイスクリームの乳脂肪含有率が最低10%とされていた
が、近年は低脂肪製品が売れるため、各メーカーは別名称でこれらを販売してきた。
今回の改訂により乳脂肪10%未満のアイスクリームも登場するが、その代わり、脂
肪含有率の明確な表示が義務化される訳である。従って、消費者はより多くの情報
を得る一方、選択の自己責任も持たされることになる。新食品基準は2年間の移行
期間を経て2002年から施行されるが、食品産業界の対応と消費者の反応が注目され
る。


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