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2000年の10大ニュース


【ブエノスアイレス駐在員事務所】浅木 仁志、玉井 明雄

1.念願の口蹄疫ワクチン不接種清浄国へ(アルゼンチン)
 5月24日、パリで開催された第68回国際獣疫事務局(OIE)年次総会の国際委
員会一般会合で、アルゼンチンが口蹄疫ワクチン不接種清浄国と認定された。99年
5月以降ワクチン接種を中止し、その後口蹄疫の発生がなかったのが認定理由であ
る。約100年にわたる同国の努力が実を結んだ結果であり、畜産関係者の喜びはひ
としおであるが、今後は今回獲得した新しい衛生ステータスを牛肉などの輸出面で
最大限生かすさらなる努力が期待されている。

2.南部、中西部の州が口蹄疫ワクチン接種清浄地域に(ブラジル)
 5月24日の第68回OIE年次総会で、口蹄疫ワクチン接種清浄地域のリオグラン
デドスル州とサンタカタリナ州に続き、ブラジル南部と中西部の1連邦地区と5州
が同じ衛生ステータスを獲得した。同国の牛肉生産の半分を占める地域が口蹄疫ワ
クチン接種清浄地域と認定されたことで、今後の南米関係の牛肉輸出に新たな展開
が予想される。

3.アルゼンチンで口蹄疫問題が発生
 アルゼンチン北部、パラグアイとの国境に隣接するフォルモサ州クロリンダ地区
の農場で8月2日、不法に輸入された牛10頭が確認され、血清検査の結果、10頭の
うち4頭に口蹄疫の抗体陽性反応が確認された。今回の口蹄疫問題の発生により、
米国、カナダ、台湾などがアルゼンチン産牛肉などの輸入停止を含めた制限措置を
実施した。なお、OIEは10月6日、同国の衛生ステータス(口蹄疫ワクチン不接
種清浄国)に変更がないことを発表した。

4.ウルグアイ、ブラジルで口蹄疫問題が発生
 10月下旬、ウルグアイ北部アルティガス県パラヘ・チフレロ地区の3牧場におい
て、牛29頭、豚11頭に口蹄疫感染が確認された。感染源については、発生牧場で飼
養していた雌豚による汚染飼料の接取などが疑われた。また、8月下旬には、ウル
グアイと国境を接するブラジル南部リオグランデドスル州で口蹄疫が発生しており、
ウルグアイのワクチン不接種清浄国、リオグランデドスル州のワクチン接種清浄地
域としての衛生ステータスは一時的に留保されている。

5.課題山積の中、ベロンガライ新農牧庁長官が新しい船出(アルゼンチン)
 ラパンパ州選出の急進党議員アントニオ・ベロンガライ氏が、デ・ラ・ルア政権
の下で農牧水産食糧庁長官に任命され新しい農政がスタートした。同氏は今回長官
に任命される前に超党派の農業検討委員会の議長を務めたことがあり、農業問題全
般に精通していると関係者の評判は高い。就任後は農業団体と対話を進めながら具
体的な農業対策案を出し、口蹄疫問題では従来通りの衛生ステータスを堅持させる
など、同国の厳しい財政事情の中でかなりの手腕を振るっているようである。

6.アルゼンチン、ブラジル産鶏肉にダンピング制裁措置
 アルゼンチン経済省は7月24日付け官報で、アルゼンチン向けブラジル産鶏肉丸
どりの最低輸出価格をサジア社に対し0.92ドル/kg、アビパル社を含むその他の輸
出業者に対し0.98ドル/kgと設定し、輸出価格が最低輸出価格を下回る場合、その
差額相当分をアンチダンピング税として賦課する決議を発表した。これに対しブラ
ジル政府は、同措置の見直しを求めていたが、両国間における話し合いは平行線を
たどったことから、問題の解決はメルコスルの紛争処理機関に委ねられた。

7.遺伝子組み換え体によるトウモロコシの貿易摩擦(ブラジル、アルゼンチン)
 ブラジル政府は6月、環境保護団体グリーンピースによる連邦裁判所への訴えを
基にアルゼンチン産トウモロコシに遺伝子組み換え体(GMO)が混入していると
の理由で、いったん輸入を差し止めた。その後の検査の結果、GMOの混入が確認
されなかったことから、結局輸入が認められたものの、安価で良質なアルゼンチン
産トウモロコシの輸入に降ってわいたような出来事に、ブラジルの養豚・養鶏業者
は困惑の色を隠せなかった。現在、州によっては飼料用に限りアルゼンチン産のG
Mトウモロコシの輸入を認めているという情報がある。

8.農牧水産食糧庁、新しい農業対策案を発表(アルゼンチン)
 穀物など一次産品価格の低下、高金利、燃料費やサービスコストの上昇で農業の
収益性が悪化している。そうした中6月、農牧庁は借換融資金利を下げ、農業用デ
ィーゼル油を卸売価格で販売することなどの対策案を発表した。これに対し各農業
団体は、対策の実効性に問題があるとして農業ストの構えを見せた。その後、農業
対策案は実行に移されたが、国自体が経済不況にあえぐ中、限られた農業対策では
問題の解決には遠く、10月に農業3団体によるストが実施された。

9.牛肉輸出構造の変化(アルゼンチン、ウルグアイ)
 2000年に入りアルゼンチンとウルグアイの牛肉輸出が、北米自由貿易協定(NA
FTA)市場と台湾などの一部のアジア地域にシフトして推移した。特にアルゼン
チンは従来の主要な供給国である豪州を退け、カナダと台湾市場に攻勢をかけ、ウ
ルグアイの冷凍牛肉は日本市場で大きな伸びを見せた。価格競争力、需要者の求め
る特定部位に量とスペックで柔軟に対応できる強味が証明された結果である。

10.99年アルゼンチン、生乳生産は過去最高、酪農家戸数は減少
 アルゼンチン農牧水産食糧庁から2000年に発表された99年の同国の生乳生産は、
前年を8.1%上回る1,031万1千キロリットル(暫定値)となり、過去最高であった
前年の記録を更新した。しかし、生産量の増加に伴う生乳価格の下落が収益性を圧
迫したことなどから、酪農家戸数の減少が顕著となった。


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