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2000年の10大ニュース


【ブラッセル駐在員事務所】島森 宏夫、山田 理

1.牛海綿状脳症(BSE)問題が深刻化
 イギリス、ポルトガルなど一部の国で主に問題とされてきたBSEが、今年はE
U全体の問題として深刻になっている。その引き金になったのはフランスで、検査
体制の強化に伴い今年に入り同国のBSE感染確認頭数が急増している中、10月下
旬に大手スーパーでBSE感染の疑いのある牛肉が販売されたことが明らかになっ
た。また、2月にはデンマークで、11月にはスペインおよびドイツで、それぞれ初
めて自国産牛からBSE感染が確認された。特に11月以降は消費者の不安が拡大し
ており、EUにおける牛肉消費は減退、牛肉価格も暴落している。

2.BSE対策を強化
 EU農相理事会において6月19日、牛・羊・山羊のと体からの特定危険部位(S
RM:BSE感染源となる可能性の高いと見なされる特定部位)除去を全加盟国で
20011年1月から実施することとする提案が承認された。7月17日には、消費者か
ら要望の強い、牛肉の原産国表示の実施(9月から)が承認された。さらに12月4
日の緊急農相理事会において、BSEの感染源と見なされている肉骨粉飼料のすべ
ての家畜に対する使用禁止(2001年1月から6ヵ月間)、30ヵ月齢を超える牛のB
SE検査義務付け、牛肉の価格低下対策などが承認された。

3.食品の安全性に関する白書を公表
 EU委員会は1月12日、「食品の安全性に関する白書」を公表した。この中で、
高水準の食品安全基準を確保し、食品の安全性に関する消費者の信頼を回復するこ
とを目的として、既存の諸規則の包括的な見直しを含む今後の施政方針を明らかに
した。特に注目されるのは、食品安全に関する独立機関としての欧州食品機関(Eu
ropean Food Authority)の設立構想で、11月8日には、より具体的に、同機関が担
うべき役割(政策の科学的根拠の提供、加盟国独自の類似機関との協力・調整、食
品および飼料の危害発生警告システム管理等)などが提案された。

4.イギリスで14年ぶりに豚コレラが発生
 イギリスで8月8日、86年の発生以来14年ぶりに豚コレラの発生が確認された。
11月4日(最終発生確認日)までに計16件発生したが、発生地はイングランド東部
の3州(ノーフォーク州、サフォーク州、エセックス州)に限局されている。同地
域では豚の移動制限が実施され、豚生体、精液、卵および受精卵の輸出を禁止する
などの措置が講じられた。

5.中東欧諸国と農産物自由化について合意
 中東欧のEU加盟交渉国10ヵ国との農産物自由化交渉が合意に達し、豚肉、鶏肉、
チーズなど多くの農畜産物について、輸出補助金や輸入関税が原則として相互撤廃
(ダブル・ゼロと呼ばれている)されることとなった。新たな貿易体制については、
ポーランドを除く9ヵ国(ブルガリア、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リト
アニア、チェコ、ルーマニア、スロバキア、スロベニア)とは7月から実施されて
おり、合意の遅れたポーランドとは2001年1月から実施される予定である。

6.生乳生産が減少に転じ、脱脂粉乳の需給がひっ迫
 2000年上半期のEUにおける生乳生産は、春先の不安定な天候で北部地域を中心
に放牧開始が遅れたことなどが影響し、前年同期比で0.5%減と減少に転じた。域
内の乳製品生産がチーズや全粉乳へシフトしていることもあり、脱脂粉乳の生産は
減少し、需給がひっ迫し、脱脂粉乳価格は価格が低迷した99年に比べ高騰した。99
年7月末には27万トンに達していた介入在庫量も2000年10月末には900トンとほぼ
解消された。また、脱脂粉乳の輸出補助金は段階的に削減された(年頭における輸
出補助金:81ユーロ(約8,000円:1ユーロ=99円)/100kg→10月13日以降:15ユ
ーロ(約1,500円)/100kg)。

7.オランダで環境対策のため、養豚農家の離農を推進
 オランダでは、河川や地下水の家畜ふん尿による硝酸塩汚染など、深刻化しつつ
ある畜産環境問題に対応するため、3月22日から5月19日までの2ヵ月間、養豚農家
の離農申請受付が実施された。この結果、2,415戸の養豚農家の離農申請が承認さ
れた。離農する農家へは、削減されるリン酸塩排出量に応じた補償金が支払われ、
現存の農場施設を取り壊して住宅建設をする場合には助成金が用意されている。同
国では現在、集約的農家を対象に、家畜ふん尿過剰排出課徴金が課せられているが、
2001年からは全農家が対象となる予定である。

8.イギリスでBSE調査報告書を公表
 イギリスのBSE調査委員会は10月26日、BSEと変異型クロイツフェルト・ヤ
コブ病(vCJD)に関する報告書を公表した。同委員会は98年1月にブレア首相
直轄の組織として設置され、BSEとvCJDの発生経過および96年3月までに実
施された政府による対策の妥当性などを2年半にわたって精査し、その結果を4千
ページにわたる報告書として取りまとめた。これを受けて、ブラウン農漁業食料相
は、前政権のBSE問題への対応を批判するとともに、vCJDによる死亡者の遺
族や患者に対する賠償などのための基金を創設することを明らかにした。

9.成長ホルモンの使用禁止継続
 EUでは、成長促進剤としての家畜に対するホルモン使用を禁止しており、同ホ
ルモンを使用した牛肉の輸入も禁止している。この輸入禁止については、世界貿易
機関(WTO)により、衛生植物検疫(SPS)協定違反との裁定が98年2月に下
されたが、同協定に沿った改善勧告を受け入れていない。EU委員会は5月24日、
その後の知見を踏まえて検討した結果として、成長ホルモンの使用禁止継続は適当
とする提案を行った。中でも、発がん物質と考えられる17β−エストラジオールに
ついては永続的な使用禁止を提案している。

10.オーガニック農畜産物生産が増加
 99年7月に制定されたEUのオーガニック畜産物に関する生産基準が、2000年8
月4日から施行された。EUでは、食品の安全性などを求める消費者指向に支えら
れ、オーガニック畜産や農業が近年急成長している。大手スーパー等小売り業界も
取り扱いに積極的であり、さらに環境保全、動物愛護にも資するオーガニック農業
は各国で補助金が交付されるなど生産振興が図られており、2000年も引き続きオー
ガニック農畜産物生産が増加している。


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