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2000年の10大ニュース


【ワシントン駐在員事務所】渡辺 裕一郎、樋口英俊

1.農業に関する交渉提案をWTOに提出(米国、カナダ)
 米国は、6月末と11月中旬の2回に分けて、農業に関する交渉提案を世界貿易機
関(WTO)に提出した。前者は、国内支持、市場アクセス、輸出競争などの分野
に及ぶ包括的な提案であり、特に、国内支持については、固定された基準期間にお
ける農業総生産額の一定の率まで助成合計量(AMS)を削減するという新たな削
減方式が示され、また、後者では、関税割当に絞った提案がなされている。一方、
酪農品、家きん肉および鶏卵の供給管理・関税割当制度を抱えるカナダは、市場ア
クセスに関する交渉提案を、同国が属するケアンズ・グループとは別に提出するな
ど、足並みの乱れが見られるところとなっている。

2.対中国NTR恒久供与法が成立(米国)
 10月10日、クリントン大統領の署名により、中国のWTO加盟を正式に承認する
ための対中NTR(通常貿易関係、最恵国待遇と同義)恒久供与法が成立した。同
法案の連邦議会における審議は、11月の大統領・連邦議会選挙を前に、労働組合な
どからの反対もあって難航が予想されたが、結果的には、5月24日に下院を、9月19
日に上院を通過した。99年の米中合意によれば、中国の牛肉関税は、2004年までに
45%から12%に、豚肉も同様に20%から14%に引き下げられることなどから、国内
の畜産関係団体も中国の市場開放に大きな期待を寄せている。なお、WTOの場に
おいて最終的に加盟が承認されるのは、来年以降に持ち越された。

3.波紋が広がるスターリンク混入問題(米国)
 飼料用としての販売のみが承認されているアベンティス社の遺伝子組み換えトウ
モロコシ・スターリンクの混入問題は、内外に大きな波紋を呼んでいる。9月中旬
に、国内で販売されているタコスの皮からスターリンクが検出されたのを発端に、
米農務省(USDA)は、農業者からの全量買上げ措置(経費はアベンティス社負
担)を行うと発表。関連製品のリコールが相次ぐ中、12月上旬には、米環境保護庁
(EPA)の専門家会合が、スターリンクによるアレルギー誘発の可能性を示唆す
る報告書を公表した。一方、食用・飼料用ともに未承認である日本国内からもスタ
ーリンクが検出され、米国側の適切な対応が求められている。

4.低乳価対策として、酪農家への3度目の直接支払いの実施を決定(米国)
 10月28日に成立した2001年度(2000年10月1日〜2001年9月30日)の農業関連歳出
法に基づく総額約36億ドル(約4,032億円:1ドル=112円)の緊急農家支援対策の
一環として、記録的な乳価の低迷が続く酪農家への直接支払いの実施が決定された。
これは、99年夏と2000年4月に続く3度目の措置であり、助成金単価(生乳100ポ
ンド当たり)は、2000年の生乳価格と過去5年間の平均価格との差の35%に相当す
る64.68セント(約1.6円/s)、1農家当たりの対象数量の上限は、390万ポンド
(約1,800トン)に設定されている(USDAは、約8万戸の酪農家が、平均で8,3
00ドル(約93万円)の助成金を受給するものと推計)。なお、同歳出法には、加工
原料乳の価格支持制度の再延長(2001年末までの1年間)も盛り込まれた。

5.農家セーフティネットの新たな枠組みに合意(カナダ)
 連邦および各州農業大臣は7月5日、98年から2年間の時限措置として実施され
てきた農業所得災害支援対策(AIDA)を、純所得安定口座(NISA)や作物
保険などと並ぶ柱の1つとして正式に位置付けることなどを内容とする、今後3年
間の農家セーフティネットの新たな枠組みについて合意した(予算総額は、連邦・
州政府の6:4の負担による総額55億カナダドル(約4,180億円:1カナダドル=
76円))。AIDAは、農産物の価格低迷や自然災害による収入減に対処するため、
参加農家における直近3年間の平均所得の70%までを補償するという措置であり、
今回の合意で、名称もカナダ農家所得プログラム(CFIP)に改められる予定で
ある。

6.米環境保護庁、TMDLプログラムの最終規則を公布(米国)
 米環境保護庁(EPA)は7月13日、河川、湖沼などの水域の水質改善を目的と
した、いわゆる「1日当たり総合最大許容負荷量(total maximum daily load:T
MDL)プログラム」の最終規則を公布した。これにより、水質保全法の直接的な
規制対象である大規模畜産経営体などの点源汚染源だけでなく、より小規模な農業
経営体などを含む非点源汚染源についても、水域ごとに設定される汚染物質のTM
DLの順守が義務付けられる。本プログラムの施行は、2001年10月以降とされてい
るが、農業団体や超党派の国会議員などの強い反対もあり、実施に向けては難航も
予想されている。

7.食肉取引情報の報告義務制度に関する最終規則を公布(米国)
 USDAは12月1日、99年家畜強制報告法に基づき、一定規模以上の食肉パッカー
や輸入業者に対する食肉取引情報の報告義務制度に関する最終規則を公布した(施
行日は来年1月末)。これは、パッカーの寡占化や生産者との間の販売契約に基づ
く取引が急速に進展している中で、取引情報を開示し、価格形成の適正化を図ると
の観点から導入される措置であり、取引全体の80〜95%がカバーされるものと見込
まれている。なお、9月には、同法に基づき、肉豚販売契約の内容についてパッカ
ーに報告義務を課す規則案も公表されるなど、取引の透明化に向けた動きが具体化
し始めている。

8.最終的なオーガニック基準を公布へ(米国)
 USDAは3月7日、有機(オーガニック)食品の生産、表示、認証等に関する
全国統一基準の第2案を公表した。これは、97年12月公表の当初案に対して寄せら
れた約27万6千件ものパブリックコメントなどを踏まえて修正されたものである。
これによると、遺伝子組み換え食品や放射線照射が施された食品などがオーガニッ
ク表示の適用除外とされ、また、家畜に関する基準については、オーガニック飼料
の100%給与や抗生物質の使用禁止などが規定されたほか、動物愛護的な観点も盛
り込まれている。最終規則は、年内にも公布される予定であり、足かけ10年にも及
ぶ議論に終止符が打たれる。

9.輸入ラムへのセーフガード措置はWTO協定違反との裁定(米国)
 12月上旬、WTOパネルは、米国による輸入羊肉(ラム)に対するセーフガード
措置をWTO協定違反と認定した。米国は99年7月、ラムの輸入増大が国内産業に
重大な損害を与えているとして、豪州およびニュージーランドからの輸入を対象と
した関税割当を導入。具体的には、1年目の割当枠31,851トン(税率:枠内9%、
枠外40%)を、3年目には同33,565トン(3%、24%)にまで漸増させるというも
のであるが、両国は、本措置の発動をセーフガード協定などに不整合であると申し
立て、99年11月にパネルが設置された。パネル報告書の内容は、近く明らかにされ
る。

10.米国産牛肉へのダンピング防止税の賦課を正式に実施(メキシコ)
 メキシコ商工振興省(SECOFI)は4月28日、米国産牛肉のダンピング輸出
に関する99年8月の仮決定を追認し、ダンピング防止税の賦課を正式に開始した。
その課税水準は、牛肉の処理形態や輸出企業ごとに異なるだけでなく、USDAに
よる格付けが行われなかったものや、と畜後30日を経過した「チョイス」または
「セレクト」といったメキシコ産牛肉との競合が想定される比較的低級なものに限
って最高税額(部分肉:63セント/kg)を賦課するという格差が設けられている。
USDAや米国の関係団体は、WTO協定との整合性を問題視しているが、現在の
ところ、具体的なアクションは起こされていない。


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