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農畜産品衛生事業団(セナサ)新総裁の抱負



【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 2月9日発】アルゼンチンでは、政権交
代に伴い動植物検疫、食品の安全性を管轄する行政組織の農畜産品衛生事業団(セ
ナサ)の新総裁に、経験者であるオスカル・ブルニ氏が就任した。同氏は、所信表
明の中で、食品の安全性の確保と高品質化、口蹄疫撲滅後のフォローなどを懸案と
して挙げており、また、セナサ自体の組織立て直しも急務として、今後の抱負を次
のように語った。

(食品の安全性と品質)
 国内向けも輸出品も等しく「メイド イン アルゼンチン」と誰からも信頼され
る、高品質で安全性の高い食品を作る時期に来ている。そのための基礎として国内
向けと輸出品の衛生条件の差(輸出品には厳しい条件が求められ、国内基準ととも
にダブルスタンダードと呼ばれる)を徐々になくす必要がある。その目的で、ブエ
ノスアイレス市および同州と協定を結びこの地域の約1千7百万人の消費者を対象
に既に活動を始めつつある。将来は国全体に広げる必要がある。

(口蹄疫について)
 疫学的に見て、国内でこの病気が発生することはまず考えられない。

 ただ、ワクチン接種を中止したからには、将来の緊急事態に備えるために、さま
ざまな方面の予防線を幾重にも張り巡らせ、品質の保証するという厳しい責務を自
覚しなくてはいけない。もちろん、セナサは現在ボリビアにワクチンを提供し、国
境管理は厳重に行っている。

(セナサの組織)
 セナサは優秀な専門技術集団であり、その任務も重要だ。しかし官僚主義がはび
こり、管理運営が硬直化し、無駄な予算も多い。少数精鋭のセナサ再編整備委員会
を編成し、理事会の立て直しも含め早急に対処し、1年をめどに近代化したセナサ
にしたい。

(原産地証明)
 証明を体系的に行うには、既存の豊富なデータを情報ネットワークに乗せて処理
する必要がある。現時点で家畜の原産地証明の手段にマイクロ・チップを導入する
ことは反対である(脱税対策にマイクロ・チップを利用すべきという一部の意見が
ある)。この利用には、もう少し様子を見る必要がある。

(ブルセラ病と結核病対策)
 これら病気の対策には、生産者の反対が強く活動が進展していないようだ。89
年の口蹄疫対策時のように、数年かけて生産者を啓もうし、家畜衛生の認識を高め、
理解を得なければ成功しない。これについては方針と計画を立て直す。付言すれば
関係者が口蹄疫対策に追われて、その他の疾病の対策がなおざりになっている感じ
を受ける。

(市場開拓)
 輸出市場の開拓については、農牧水産食糧庁と外務貿易宗務省とチームを組んで
準備する。今までは米国と欧州を考えていればよかったが、今後はアジア地域の市
場開拓に力を入れなければいけない。


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