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【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 2月10日発】タイ畜産振興局は、衛生水準 の高い施設で処理された安全かつ安心な豚肉の供給を増加させるとともに、シンガ ポール、日本などの市場開拓を図るため、バンコクの東に隣接するチャチュンサオ 県の国有地に、4億8千万バーツ(1バーツ=約2.9円)を費やして、衛生的か つ近代的な設備を有する豚のと畜場を98年12月に完成させた。そして、このと 畜場の運営は、効率的な経営を行う観点から、民間業者に委ねることとしていた。 財政当局は、と畜場の建設に多額の費用を要したことから、3年間を1レンタル 期間とし、同期間の土地賃借料を2千90万バーツ、建物使用料を月額3万4千バ ーツ、機械・器具使用料を月額1万バーツと決定した。しかし、民間業者は、1ヵ 月当たりの平均使用料が約62万バーツにもなるため、採算が合わないとしてと畜 場の運営に関心を示さず、未稼動の状況が続いていた。 畜産振興局は、この事態を打開するため、と畜場を運営するに当たっては、豚の 集荷など多くの問題が山積することから、土地賃借料の約2千万バーツを免除し、 3年間は適正な使用料を決めるための試行期間とすることで財政当局と協議を行っ ている。 このように条件が改善されようとしている中、チャチュンサオ県のポンナムロン 社とチャンタブリ県の東部畜産協同組合の2法人は、使用料を決めるための試行期 間の大幅な延長と、と畜場に隣接する食肉加工場を建設するための財政的な支援な どを政府に求めた上で、と畜場の運営に名乗りを上げている。 業界では、3年間の試行期間中に大きな支出を伴うことなしに、近代的かつ衛生 的な施設の1つとして、諸外国から認められていると畜場を運営する機会が与えら れれば、大きな利益が期待できると見込んでいる。さらに、その運営が畜産振興局 の満足できるものであったならば、次の長期契約も可能となり、運営する法人にと っては有利な条件がそろっているとしている。 ポンナムロン社はと畜された豚肉をスライス加工し、そのうちの約10%を航空 会社、ホテル、レストランなどの高品質を求める市場に供給し、残りは加工用に仕 向ける計画を立てている。なお、同社は、最近、タイ航空に食品資材を供給してい るとみられている。また、東部畜産協同組合は、加工向け原料用および一般的な市 場への販売を予定している。 一方、運営法人を決定するに当たっては、既に畜産振興局がポンナムロン社を許 可したものの、審査の過程に不公平があるとの抗議により、両法人による共同運営 を打診するなど混乱が続いている。 タイ政府は、完成後1年以上もの間、操業されずに休眠状態が続いていると畜場 の早期運営と、非合法とされていると畜場で処理された食肉を市場から排除する対 策を、国民から強く求められている。 このためにも、完成した近代的な豚のと畜 場の近々の操業開始が期待されている。
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