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【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 1月12日発】アルゼンチンでは、91 年の兌換(だかん)法導入以降、経済の安定化に伴い農林漁業融資額が増加してい る。特に、穀物生産者は、@国際市場において、農業補助金を受けている国々との 競争を強いられていること、A競争相手国である先進国の生産者は、より低い金利 での資金調達が可能であること、B穀物業界が生産技術への投資増加を期待してい ることなどから、より条件が有利な融資制度に対する要望が強い。しかし、同国で は、近年の農産物国際市況の低迷などによる生産者の経営状況の悪化により、負債 問題が一層表面化している。 アルゼンチン農牧水産食糧庁によれば、99年6月末時点における農林漁業部門 の金融機関に対する負債額は、約65億ペソ(約6,760億円:1ペソ=104 円)に達するとみられている。これ以外にも、農林漁業部門は生産財やサービスを 提供する企業などに対して負債額が約30億ペソ(約3,120億円)あると言わ れている。96年における農林漁業部門の経営形態別の金融機関に対する負債状況 のシェアを見ると、主に穀物部門と畜産部門による複合経営が全体の42%と最も 多く、次いで、穀物および油糧種子経営が15%となっている。肉牛繁殖および肉 牛肥育経営は11%である。林業や漁業部門については、それぞれ、1.3%、 1.6%と低水準である。 99年6月末時点における農林漁業部門の負債額に占める金融機関別シェアは、 国立銀行が全体の45%と最も多く、民間銀行が37%、州立および市立銀行が1 7.9%、その他の金融機関が0.1%となっている。93年12月末時点の同シ ェアは、国立銀行が43%、民間銀行が29%、州立および市立銀行が27%、そ の他の金融機関が1%であり、93年と99年の比較では、民間銀行に対する負債 額の増加が大きく、民間銀行別の内訳では、外資系銀行の増加が著しい。 近年、政府の講じた金融支援策の1つとして、99年8月に国際農牧工業展でメ ネム前アルゼンチン大統領が発表した、穀物の作付け・収穫に対する8億ペソ(8 32億円)の融資枠の設定と政府による3%の金利補助が挙げられる。これについ ては、農牧水産食糧庁が99年に2度の入札を実施し、官民の銀行を合わせ約5億 ペソ(約520億円)の入札が終了している。入札結果を見ると、国立銀行のシェ アが40%と最も多く、同行の入札金利は13.5%であった。また、99年12 月に発足した新政権は、市況下落の著しかった小麦について、1億ペソ(104億 円)の融資枠の設定と3%の金利補助を決定している。 政府がこうした金融支援策を打ち出す一方、農林漁業部門の負債は膨大な額に達 し、99年6月末時点における同部門の金融機関に対する負債額のうち、約2割は 返済が滞っているとされ、こうした現状を経済公共事業省は危惧(きぐ)している。 今後、銀行業務の健全性を図る観点からも、最大の貸出銀行である国立銀行を中心 に融資査定が一層厳しくなれば、特に中小の生産者にとって資金調達がより困難な ものになるとみられている。
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