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【シドニー駐在員 野村 俊夫 1月13日発】豪州の羊・羊肉関係団体は、先月 末、羊の個体識別制度を導入する計画を明らかにした。世界各地で食品の安全性に 対する関心が高まる中、豪州産の羊肉や生体羊に対する信頼を確立することが狙い とされている。 今回、当該計画を明らかにしたのは、豪州食肉協議会(AMC)、全国食肉協会 (NMA)、豪州羊肉協議会(SCA)、豪州家畜取引業者協会(ACLA)、豪 州食肉家畜生産者事業団(MLA)の各団体である。 発表された計画によると、牛の場合とは異なり、電子標識ではなく通常の耳標を 採用し、当面は個体ではなく群単位での識別から開始するとしている。しかし、国 内の飼養頭数が約2千6百万頭の牛に比べ、羊は同約1億2千万頭と格段に多いだ けに、実行面の成否が注目される。 同制度への生産者の参加はあくまで任意とされているが、各州の政府が耳標およ び識別コードなどに関する規格を定め、併せて、一度装着された耳標の取り外しを 禁止するなどの規則を制定するとされている。 同制度に参加する生産者は、定められた規格の生産者耳標(シープ・ブリーダー ・タグ)に、各牧場の識別コードを記入し、雄は左耳、雌は右耳に装着する。耳標 は7色が用意され、各色は生産年を示す。同時に、生産者は、定められた様式の家 畜販売証明書(ベンダー・デクラレーション)を作成する。生産者耳標と家畜販売 証明書は、生産からと畜に至るまで必ず装着・譲渡され、羊の個体識別証明として 相互に補完しつつ機能する。 羊を購入した業者は、白色の取引耳標(トランスアクション・タグ)に関係する 情報を記入して生産者耳標とは別に装着し、家畜販売証明書に必要事項を追記する。 取引耳標は、売買が行われるたびに追加装着され、生産者耳標がない羊は、最初に 装着される取引耳標が個体識別の目安とされる。 羊の場合、耳標によって識別される情報は、当面、生産牧場と生産年に限定され る。将来的には、牛と同様に、個々の羊を完全に識別できるシステムを確立したい としている。 現在、各団体は、同計画に対する意見を公募しており、必要があれば修正を加え た上、できるだけ早期にこれを開始する意向だ。既に、西オーストラリア州の一部 では、同様の制度が実施されているが、今回の計画はこれと整合するものとされて いる。 今週、伝染病を理由に豪州からの生体羊輸入を停止していたサウジアラビアが、 約10年ぶりに輸入を再開し、約6万頭の羊がビクトリア州から船積みされた。食 肉衛生や生体検疫への関心が高まる中、家畜の個体識別制度は、ますます重要な安 全性保証手段として注目されつつある。
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