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【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 1月13日発】タイの牛乳・乳製品需要は、 これまでの順調な経済の発展に伴い、飛躍的に拡大し、例えば、96年の1人当た りの年間牛乳消費数量は、92年の14.7sに対し25.2sとなった。しかし、 通貨危機以降は、経済の停滞による収入の減少、国産生乳最低取引価格の引き上げ による牛乳の値上がりなどの影響を受けて、需要の低下した状況が続いている。ま た、99年の脱脂粉乳の関税割当枠は、このような需要の停滞などで、98年に比 べ約2万トン削減されていた。 こうした状況の中、タイ政府の畜産政策委員会は、2000年における乳製品の 関税割当を決定した。 その内容は、脱脂粉乳が前年の68,500トンに対し12,900トン削減さ れた55,600トンとなっている。また、この55,600トンの内訳は、乳飲 料製造業者に11,400トン、コンデンスミルク製造業者に25,300トン、 乳製品を原料とする食品製造業者に12,300トン、脱脂粉乳輸入業者に1,6 00トンとなっているが、残りの5千トンは、追加の原料を必要とする業者用もし くは新規に参入する業者用となる。なお、関税割当数量内の関税率は5%で、これ を超える数量については225.6%の高率となる。 また、原料乳および飲用牛乳の関税割当数量は99年とほぼ同数で、2,320 トンおよび26.7トンとなる。なお、この数量内の関税率は、いずれも20%で、 これを超える数量については、原料乳が43.0%、飲用牛乳が87.6%となる。 このように、99年に引き続く脱脂粉乳の割当数量の削減は、乳製品製造業者が 生産コストを引き下げるために、割高な国産生乳の使用を控え、安価な輸入脱脂粉 乳に傾斜したことにより、国産生乳が余剰となる問題に抗議する酪農家に配慮した ものとみられている。ちなみに、農業経済局によると、輸入脱脂粉乳を使用した牛 乳1リットル当たりのコストは、国産生乳を使用した場合と比べ、30%安い8. 5バーツ(1バーツ=約2.8円)とみている。 なお、タイ政府では、最近、経済が回復しつつも、依然として乳製品の消費が低 迷しているため、1s当たり12.5バーツとなっている国産生乳最低取引価格の 廃止、学校給食用牛乳への国産生乳使用の義務付けなどの対策を講じることとして いる。 一方、粉ミルクの需要は37,000トンで、そのうち国産で供給できる数量は、 わずか13,500トンとみられている。また、今後、健康などを考慮した消費者 が、カルシウムなどを添加したヘルシーで安価な粉ミルクに関心を持つ傾向にある として、脱脂粉乳の需要は増加するものと見込まれている。 このため、業界では、今年の脱脂粉乳の輸入枠が2年連続の削減となったことに ついて、経済の回復程度によっては不足を来す恐れがあるものと予測している。
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