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イギリスの農業団体、収入減に対する補償を要求



【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 1月20日発】 イギリスの全国農業者組合
(NFU)は、1月13日、ユーロに対するポンド高の影響による農業収入の減
少に対し、3億6千万ポンド(約626億円、1ポンド=約174円)の追加補
償を要望するキャンペーンを開始すると発表した。このキャンペーンは、イング
ランド、ウェールズ地域を拠点に活動するNFUとその他の地域の農業者組合が
連携し、全国的に展開することとしている。

 EUの政策では、為替変動による各国の補助水準の変動を調整するための補償が
配慮できることとなっている。ただし、その前提として、当該国がEUに申請する
とともに、一部は同政府が負担する必要があるため、NFUは本キャンペーンを通
じイギリス政府の早期対応を求めている。

 NFUによれば、ポンド高により補償されるべき総額は4億5千万ポンド(78
3億円)と見積もられるが、イギリス政府がこれまでに支払いを約束したのはその
2割の8千8百万ポンド(153億円)にすぎず、残りの全額支払いを政府に働き
かけることとしている。

 イギリスは、99年に導入されたEUの通貨統合に参加しなかったが、その後の
ユーロに対するポンド高で、自国通貨建てベースの農産物価格が大きく低下すると
ともに、EU域内での価格競争力も低下している。

 さらに、ポンド高により、アジェンダで2000予定された肉牛等に対する直接
支払いの補助の増加が帳消しになっていると指摘し、これらに対する補償が不可欠
としている。

 補償額の積算内訳は、次の通りである。

価格変動分:1億8百万ポンド
 うち、97年牛肉価格の再評価
    (4千8百万ポンド)
    99年価格の再評価
    (6千万ポンド)
     うち酪農:2千8百万ポンド
       耕種:1千8百万ポンド
       牛肉:1千1百万ポンド
       砂糖:  3百万ポンド
直接支払変動分:3億4千2百万ポンド
 うち、99年度直接支払再評価
    (1億7千6百万ポンド)
     うち耕種:1億1千3百万ポ
          ンド
       牛肉:4千1百万ポンド
       羊: 2千2百万ポンド
    2000年度直接支払再評価
    (1億6千6百万ポンド)
     うち牛肉:8千3百万ポンド
       羊 :4千5百万ポンド
       耕種:3千8百万ポンド
計:4億5千万ポンド

 また、NFUは、牛海綿状脳症(BSE)問題に対して、30ヵ月齢以上の牛の
とう汰に係る補償についての上限体重(560kg)の撤廃とその補償金;1千9
百万ポンド、経産牛への支払単価の増額(1kg当たり15ペンス→65ペンス)
;7千万ポンド、特定危険部位(SRM)等の収集・廃棄経費補償のための基金;
1億2千6百万ポンド、計2億1千5百万ポンド(約374億円)のBSE対策費
も併せて要求している。フランスのイギリス産牛肉の輸入禁止が長期化しているた
め、肉牛農家が生き残るためには政府の補助金に頼るしかないとしている。


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