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加速する豪州乳業界の再編



【シドニー駐在員 藤島 博康 1月20日発】大手乳業会社2社、ボンラック・
フーズ社とオーストラリアン組合フーズ(ACF)社の合併計画が、1月18日、
公表された。合併が実現した場合、売上高で25億豪ドル(1,750億円:1豪
ドル=70円)を超え、生乳供給者数で全豪の半数にも上る豪州最大の乳業会社が
誕生する。生乳価格支持制度の改革を見越し、生き残りをかけた乳業会社の再編は
今後、一層加速しそうだ。

 両社は、ともに酪農協を母体とする。ボンラック社はビクトリア州を拠点とし、
年間売上高12億豪ドル(840億円)。バターやチーズなどの乳製品を販売の主
力とし、近年は輸出にも力を注いでおり、売上げの約半分を海外市場に依存する。

 一方のACF社は、ニューサウスウェールズ州を拠点とし、クインズランド州に
も傘下の酪農家を抱える。年間売上高13億豪ドル(910億円)、豪州の3大飲
用乳メーカーの1つであり、国内の牛乳販売シェアは35%に上る。飲用乳のほか
には、ヨーグルトや乳製品デザートなど、いわゆるフレッシュものの国内シェアが
大きい。

 ボンラック社のヒル会長は「国内では、今年6月末で加工原料乳の価格支持制度
の打ち切りや、飲用乳価格支持制度の見直し問題に直面する一方、世界的な乳業再
編などから国際市場での販売競争は激化傾向にあるなど、(豪州)乳業界は転換期
に突入している」とした上で、「われわれは、出資者である酪農家に利益となる
(合併によってもたらされる)すべての可能性を徹底的に分析する」と述べている。

 両社の発表によると、それぞれ6名を代表とする委員会を設置し、合併の実現性
や将来的な可能性について今後2ヵ月間にわたって検討する。最終的な判断は、そ
れぞれの組織の出資者である酪農家の投票によって下される。

 ACF社は、既に昨年8月に、イタリア資本の乳業会社で、国内飲用乳市場にお
いて24%のシェアを持つパーマラット社から吸収合併のオファーを提示されてい
る。これまでの発表では、パーマラット社のオファーについては、ボンラック社と
の合併案とは切り離して平行的に検討されるとしている。ACF社は、株式公開な
どを含む資本再編計画も検討しており、今後、パーマラット社のオファー、資本再
建計画、そしてボンラック社との合併という順で、生産者による票決が予定されて
いる。

 現在までのところ、パーマラット社がイタリア資本であることや、酪農協を母体
とし組織的に類似性が強いことなどから、ACF社の相手先はボンラック社との見
方が強い。また、飲用乳を中心とし国内市場に強いACF社と、乳製品を中心に海
外市場に強いボンラック社の組合せは、合併による相互補完のメリットも大きいと
みられている。

 今年6月末には加工原料乳の価格支持制度が打ち切られ、同時に生乳価格支持制
度の抜本的な改革が予想される環境下で、飲用乳メーカーを中心とした業界再編が
過熱してきた。3大飲用乳メーカーの1つで、国内飲用乳市場の33%を押さえる
とされるナショナル・フーズ社は、当初視野に入れていたACF社との合弁から撤
退を表明すると同時に、ニュージーランドへの進出を検討しているとされる。


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