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ブラジルとアルゼンチン、トウモロコシ貿易摩擦
【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 7月5日発】ブラジルのトウモロコシ生 産は、近年約3千万トン台で推移している。しかし消費量も多く、干ばつで二期作 目が不作だった99/2000年度の輸入量は約150万トン(国家食糧供給公社:CONA B)とも200万トン以上(業界筋)とも予測され、その多くは高品質で安価なアル ゼンチン産で、そのほか、パラグアイ、米国からも輸入している。 ブラジルでは関係省庁、消費者団体などで構成する国家バイオ安全技術委員会 (CTNBio)の管理下でGM作物の生産、輸入、流通・販売が規制されている。 アルゼンチン産トウモロコシの十数%はGM体と言われ、5月下旬、国際環境保護 団体のグリーンピースと消費者保護団体は、ブラジルが輸入したアルゼンチン産ト ウモロコシはGM体を含んでいるとして穀物入港地の各連邦裁判所に提訴した。提 訴を受けた各連邦裁判所は、いったん陸揚げをストップし分析調査させた結果、G M体は検出されず、ポルトアレグレ連邦裁判所は6月中旬に陸揚げを許可した。し かし、検査に要した半月間の港湾使用料は輸入業者の負担となり賠償問題に発展し ている。 さらに6月下旬には、ブラジル東北部の港に積載停泊船のアルゼンチン産トウモ ロコシの一部が検査の結果GM体と判明し、全量をアルゼンチンに送り返す措置な どが検討された。 今回の事件のポイントは、以下の点であろう。@捕鯨問題でも知られるグリーン ピースが深く関与している、Aブラジルの鶏肉の輸出競争力増大を快く思わない競 争国が多い、Bブラジル養鶏業界業は、飼料コストの低減を図るため、メルコスル の盟邦アルゼンチンの安価なトウモロコシを利用したい、CGM体が理由で米国、 アルゼンチンから穀物を調達できない場合、中国、南アフリカ、東欧からの代替輸 入が考えられるが輸送費などコスト高、DCTNBioがGM作物の危険性や環境 に与える影響を科学的に検証しているかどうかは分かっていない。 多国籍企業が牛耳る穀物貿易にGM作物のモンサント社、それにグリーンピース が絡むと事件の裏側は分かりにくい。事実ブラジルが先進国以上に厳しくGM作物 を規制する理由は一般にはわかっていない。安全性に厳しいEUもアルゼンチン産 トウモロコシを輸入している。 今回の事件は、メルコスルに共通的な農業政策がなく自治性に欠けることを露呈 してしまった。7月に入り農務省とCTNBioは、飼料用のGMトウモロコシの 輸入認可を決定する方向に動き出した。グリーンピースの動きも含め今後の動向が 気になるところだ。
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