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EU、オーガニック畜産が引き続き進展
【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 7月6日発】EU各国では、近年オーガニック 畜産および農業が急成長している。98年におけるEUの農地面積に占めるオーガニ ック農地(畜産用草地および飼料畑を含む)の割合は約2%であったが、今後も安 定的な増加が見込まれている。消費者の志向とともに、各国の補助金、オーガニッ ク食品のプレミア価格の確保が今後の進展のカギと考えられている。 このうち、フランスにおけるオーガニック畜産(97〜98年)の状況は、次表の通 りである。 フランスのオーガニック畜産 (単位:戸、頭、千羽、%)
97年 | 98年 | 増加率 | |
農家数 | 4,780 | 6,130 | 28 |
乳用経産牛 | 15,100 | 19,600 | 30 |
肉用繁殖雌牛 | 12,800 | 15,900 | 24 |
雌羊 | 21,900 | 30,900 | 41 |
採卵鶏 | 691 | 1,044 | 51 |
ブロイラー | 2,336 | 3,594 | 54 |
豚 | 8,400 | 20,900 | 149 |
資料:フランスオーガニック農業監視機関
99年にも、フランスのオーガニック畜産は拡大しており、家畜数(推定値)は、 乳用経産牛および肉用雌牛合計で4万9千頭(前年比41%増)、雌羊:4万7千頭 (同52%増)、豚:3万7千頭(同78%増)、採卵鶏:131万羽(同25%増)と大 きく増加したものとみられている。 同国のオーガニック草地および飼料畑は48%増加し、オーガニック農地(31万6 千ヘクタール)の約8割を占めることとなった。なお、オーガニック農地の割合は 全農地の約1%となっている。オーガニック畜産物の生産が急増する中、オーガニ ック飼料の不足量は8割増加し8千6百トンとなり、必要量の6割に達している。 同国では、オーガニック畜産物および農産物の需要も増加しており、特にオーガ ニックミルクについては、生産量は消費量の1割にすぎず、ドイツなどからの輸入 が増加している。 また、オーガニック農畜産物生産量がEU最大であるオーストリアでは、99年の オーガニック農家数は国内農家の約8%、約2万戸で、EU全体のオーガニック農 家数の約5割を占めている。オーガニック農地の多くは地方の山岳地帯に位置し、 その割合は全農地の約10%、30万ヘクタールとなっている。大半のオーガニック農 地は酪農で使われているが、オーガニックミルクの約5割はプレミアが付かず通常 価格で売られている。これに伴い、より利潤の高いオーガニック牛肉の生産が伸び ている。 同国産オーガニック農畜産物の約3分の1は輸出されており、主な輸出先はイギ リス、ドイツ、スウェーデンで、主な輸出品は乳製品、特にチーズである。また、 食肉の輸出もあるが、オーガニック大豆、穀物、果物および野菜は国産で不足する ため輸入している。 一方、デンマークでは、87年から、オーガニック転換後5年間補助金を交付する こととし、オーガニック農業を推進している。99年までの合計登録・転換農家数は 2,155戸となった。このうち、酪農家は750戸で、国内生産の9%に当たる39万5千 トンのオーガニックミルクを生産している。政府は、今後は特に養豚農家について も、オーガニック畜産への転換を促進したい意向であり、追加補助金を設定して参 加者を募っている。
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